2019.07.19
犬と暮らしながら働く。これからの働き方とは?|DogHuggy 長塚さん 対談インタビュー
犬を預けたい人と、自宅で犬を預かりたい人をマッチングするシェアリングサービスを提供してる「DogHuggy」の代表 長塚さんとコデアル代表 愛宕の対談インタビュー。犬がいる暮らしと働き方についてのお話です。
高校3年生の時に起業し、2015年2月DogHuggy(以下、ドッグハギー)を設立。幼い頃から大の犬好きで獣医を目指し、獣医学部のある麻布大学附属高校に進学。日本におけるペット環境の後進性、犬の殺処分が1万件もあるという事実にショックを受け、この問題の本質的な解決に取り組むためには、事業として継続的に関わっていく方が社会貢献になると考え事業を展開。Twitter( @shogoz06301 )で情報発信中。
働くをもっと自由に。コデアル株式会社CEO。即戦力の複業求人プラットフォーム「CODEAL( http://codeal.work )」運営。Twitter( @shotaatago )、ブログ( https://note.mu/shotar )では、複業やリモートワークを支援するためのノウハウや日々の思いを発信中。
リモートワークなら、犬と暮らしながら働くことを選べる?
愛宕)僕らは「働くをもっと自由に」をビジョンにコデアルというサービスを立ち上げていますが、ドッグハギーのサービスも同じように「働くをもっと自由に」に貢献されているのではないかと思っていますが、サービスのリリースからどのくらいでしょうか?
長塚)サービスのリリースからは、すでに4年が経過しています。質を重視していて、ゆっくり大きくしていきたいと考えています。
愛宕)事業の規模だと続くものである必要がありますし、もちろんコデアルも10年以上続くサービスとして考えていますから共感します。そこまで思いが持てるのは、原体験があったりするのかなと思うのですが、犬が好きなのですか?
長塚)犬がめちゃめちゃ好きで、子供の頃は犬のほうが友達が多かったくらいです(笑)。こんなこと言うと誤解されそうですが、それくらい犬が好きで獣医になろうと思っていたんです。獣医学部のある附属高校で、高校に行きながら大学の授業も受けられるというような学校に通っていました。
愛宕)なぜ、それほど犬が好きになったんですか?
長塚)物心ついた時から犬が好きで、ひとつ言えるのは、違う種類の生き物なのに心が通じ合っている感覚があったんです。お互い癒やし支えあえる存在だと感じていました。一緒に生きていく生き物として素晴らしいパートナーだと思っていますね。だから、パートナーに良い生活をしてほしいという風に思って、人間も犬と暮らすことで、より良い生活を送れると思っています。
愛宕)たしかに、犬は家族の一員みたいな存在ですもんね。ちなみに、僕の犬のエピソードでいうと、パグに似てるねって言われることです(笑)。結婚式で描いてもらった似顔絵にもパグのイラストが入っているものをいただきました。それから、義理の姉も犬好きでダックスフンドを飼っていて、犬のために住む場所を選んでいるくらいなんです。ずっと家を空けてしまう時に、犬を預けられない所がないと困ると言っていますね。コデアルはリモートワークで働けると話をすると、犬がいるから家で働けると、めっちゃありがたいと言われます。だから、犬がいる暮らしには、働くことが自由になっていることに価値があると気づいたんですよ。長塚さんが働く時は犬はいるんですか?
長塚)僕自身は、現在は犬を飼っていなくて、創業以来、ドックホストとして犬を預かる側として活動をしています。常に犬と一緒にいれる環境にしたいと思っていますね。会社のメンバーはリモートワークで働いているスタッフがほとんどです。ドッグハギーで働く理由については、犬と一緒に働けるという点と、犬のために働き方を選べて、しかも、他の犬にも貢献ができると言って働いてくれているスタッフが多いですね。だから、働き方と犬のいる暮らしはすごく大事だというのを肌で感じていますね。
愛宕)いいですね。メンバーの方々も働く場所をとらわれずに働いて、大事な犬のパートナーを大切にするために働く環境があるということですね。
信用と信頼が積み重ねながら、よりよいサービスへ
愛宕)ところで、預かる側と、預ける側で違うかもしれませんが、ドックハギーを使われている人は、どんな方がいらっしゃるんですか?
長塚)ホストで預かる方には3タイプいらっしゃって、自分も犬を飼っていて、自分自身もサービスを使いたいから盛り上げるために利用していただいている人や、仕事で忙しくされている人が、週末だけ犬と関わりたいといわれて活動いただいている人。後はペットロスの方ですね。高齢者の方で犬を飼えない方が一時的に預かっていただいています。犬が好きで預かってくれる人と週末など空いた時間だけ預かってくれる人の中でリモートワークでエンジニアやデザイナー、ビジネス系のフリーランスとして働いていている方もいらっしゃいますね。
愛宕)そうなんですね。預かる時間はどのくらいが多いのでしょうか?
長塚)1泊だけとか、2カ月間海外に行くので預かってほしいなど様々ですね。
愛宕)結構、2カ月って長いですよね。
長塚)そうねんですよ。僕も、2カ月預かったことがあるんですが、半分うちの子みたいになってしまいますね(笑)。
愛宕)預かる場所がある地域はどのあたりですか?ゲストとホストが近い地域に住んでいる必要もありますよね。
長塚)そうですね。主に首都圏が一番多いですね。次に増えてきているのは横浜です。家が広めなファミリー層が多いですね。
愛宕)預かる側になる場合は、条件はあるんですか?
長塚)必ず審査をしています。一定の犬の知識があるのかや、ちゃんと犬を預かれる部屋の状態なのか、人柄も含めて確認をしています。ビデオ通話を利用して部屋の環境を見る審査も行います。今は、こういった形をとっていますが、ゆくゆくは、いろんな人が安全に安心して犬を預かれる世界にしたいと思っています。まだ、そこまでたどり着いていませんが、ドッグホスティングという預かる形態を、社会的に認知された上で、徐々にを広げていけるようにしたいと考えています。
愛宕)サービス上の信用と信頼が積み重なっていない状態だと、良くない体験をさせてしまうことになりますもんね。
長塚)そうですね。犬を預かることってリスクもあると思います。なので、僕たちがドッグハギーというプラットフォームを使って間にはいることで、何かあった時にサポートしたり、緊急時にどういう対応をするか等を考えて寄り添う姿勢が大事だと思っています。
愛宕)たしかに心配なこともありますね。他に考えていることはありますか?
長塚)犬と働くというのが、いろんなケースが想定されると思うのですが、最近では共働きが増えて、子育ても夫婦ふたりだけに任せるのではなく地域で支え合ったり、誰かまわりが支え合う。このような今ある状況を勘案して、いろんな選択肢を得られるよう、僕らのようなサービスや事業を作っていくべきだと思っています。僕たちもドッグホスティングのサービスの中で、上手く関わっていきたいですね。
働くことはエンターテインメントに。幸福度の高い働き方って?
愛宕)話が飛んでしまうかもしれませんが、僕、SONYがめっちゃ好きなんですけど、アイボってすごくSONY的商品でいいなと思っています。まるで生き物かのように扱う体験ができるように作られているから、すごいんですよね。働く人でも同じことが言えると思うのですが、今後、最低限の機能を果たすことが出来るロボットが出てきた時にどうなるんだろうという話とも似てるのかなとも思うんですが、長塚さんってSONYのアイボってどう思われますか?
長塚)それでいうと、アイボは買いやすいしコストも抑えられて、愛情もわいてくると思うので、ひとつの選択肢としては面白いと思いますね。愛情はテクノロジーでどこまで変えていけるのかみたいな。
愛宕)そうですね。リプレイスはできないと思いますが(笑)。働くをもっと自由にというビジョンでコデアルという会社を起こして、その言葉に色々な物を集約しています。働くって何という根本的な問いに対しても、基本的に色々な意味があると思います。働くことは、そこにいることに価値があることで、個人が存在してもいいと感じるための最も重要な手段に、よりなっていくだろうと思います。
結局、一人で誰もいない無人島だと寂しくなると思うんですよね。たしかに、人とコミュニケーションがなくてラクだと思うかもしれないけど、働いていたら、誰かの困りごとを解決することで感謝されることが働くことになっているので、他の人との関係性や他の人から、ありがとうといわれるがゆえに初めて幸せが生まれる認識があるんですよね。自分たちが取り組んでいる領域では。
これからは、働くことがエンターテインメント化すると思っていて、それは、ある一部の仕事で好きじゃないとできないような領域で働くこと。例えばアイボを作ることも言えて、アイボって生活に必ずないといけないものではないじゃないですか(笑)機能的価値を訴求しているのではない部分が、もっと仕事化してくると思っています。趣味が仕事になるようなイメージですね。
長塚)シェアリングエコノミーがそう言える気がしますね。楽しみながら収入を得ているという感じで、その方が幸福感があがっていくと思っています。僕は、今23歳ですが、友人が就職活動をしているのを見ていると、その仕事が社会の何に役立っているのかを、すごく重視するようになっていると感じています。きっと、これからもそういった思考にシフトしていくだろうと思いますね。経済的な価値もより生まれると思います。
愛宕)日本のような経済大国で暮らしていく場合、基本的なものは、すでに満たされている状態。モノへの期待感は薄れていると感じますね。もちろん世界的には満たされていないところがあるのも理解していますが。長塚さんが考える、犬とすごすとは何の価値があるのでしょうか?
長塚)人によって違っていいと思っています。求めているものが人によって違うので、例えば、地域によっては狩りのパートナーとして犬を飼っている人もいるかもしれないし、家族の一員として犬とすごす人もいますし。僕は犬と一緒に成長してきたと思っています。犬とすごしたことで思いやる気持ちが生まれた感覚があります。
愛宕)犬を飼うのも機能的価値ではないですもんね。飼わなくても生きていける存在。僕、昔ヒモをやってたことがあったんですが(笑)。その時に感じたのは、日本だと生きていけるなという感覚でした。機能的な価値はないかもしれないけど、面白そうなことをやってみたいと。だから、起業も面白いこと、世の中になかったことをやってみたいという趣味の領域でしかなくて。もちろん、コデアルは機能的価値はあるんですが(笑)。
モノやサービスがなくても済むという課題は、相対的に見た時に機能以外の価値づけが大事だと感じます。例えば、ワクワクする人が集まっているとか言語化しきれない事が重要になると思うんですよね。
長塚)説明するのがむずかしいですよね。投資家への説明など資本的なことになると余計に、どのように説明して伝えるかは課題ですね。ドッグハギーのようなサービスを提供しているからこそ、深く考えたいと思っています。
愛宕)サービスはいきなり完成されないと思いますが、チームの成長がサービスに反映される感覚はあります。サービスをつくっていく過程で、ユーザーに上手く使ってもらえない部分がでてきたり、また使いたいと思ってもらえるような体験を提供できてない等、いろいろな課題が出てくる。コデアルは、サービスを提供してから、ユーザーが1万人を超えるまで、利用者との対話の中で学ぶことでサービスを改善し、チームでつくってきました。当初から、ユーザーの動きを読めていたかというと、そうではないですね。すごい起業家なら違うのかもしれないけど、どこまでサービスをつくる前段階から、事業の方向性が見えているのか?長塚さんはどうでしたか?
長塚)僕は作りたい世界観が確固としてあるのですが、それが正しいかどうかは、日々の仮説検証の中で改善していく感じです。ドッグハギーの場合、ビジョンは「日本を動物先進国に」ミッションは「街のみんなが犬の家族」としています。地域の人たちみんなで犬を育てていけるような世界をつくりたいですね。ただ、助け合いましょうと言っても出来ないので、僕らがプラットフォームをつくってインフラになるようにしたいと考えています。まわりに犬を預かってくれる親戚のおじさん・おばさんがいっぱいいるみたいな温かい世界をつくりたいですね。
愛宕)犬が会話のきっかけになることもありますよね。犬とか赤ちゃんのような可愛い存在って、会話の中心になるし、そういう価値がありますよね。働かなくなると会話のネタにもなるし(笑)。
長塚)働き方によって時間の使い方も変わってくると感じています。例えば今までだと、1日8時間どこかの会社に行って働くことが主流でしたが、リモートワーク等で自宅で働けるようになると、合間に近くの公園へ行って散歩ができたり。幸福度が高くなりそうですよね。
愛宕)そうですね。僕が思ったのは、働くを自由にすることによって、ライフスタイル全体が自由になる度合いが高いということです。自由になった余暇でいろんなサービスを体験しにいく。楽しめるお金が確保されている。稼ぐために仕事が目的化すると不自由になって幸福度が下がると感じています。働くを自由にして、ある一定の収入にもつながることは、人生の幸福度にすごくつながっていると感じています。
長塚)そうですね、ドッグハギーのサービスには、今は審査があるので、犬を預かるハードルがありますが、誰もが犬を預かれるようになれば、飼う人が少なくなっていくこともいいと思うんですよ。預かるのが基本的な犬との関わり方になるというのも一つの選択肢だと思います。
愛宕)おーー!なるほど!犬を飼わない。私の犬ではなく皆の犬ってことですね。それは、幸福度高いですね。おじいちゃんとか、おばあちゃんって、基本的に孫に対して優しいじゃないですか、そんな感じで適度に距離があったほうが優しくなれる。自分の犬だとしつけとか頑張りすぎてしまったり(笑)。
長塚)そうですね。僕みたいな犬好きは飼ったらいいと思います。実は犬をちゃんと責任をもって飼いきれると思っている人が多くいるとは思っていなくて。
愛宕)面白いですね。人によってこだわりたいものが違いますし、僕も100%所有しているモノって、心からこれだけはと思うモノだけです。それ以外は所有欲がないですね(笑)。
長塚)僕の原体験でいうと、実は犬を預かっていたことがあったから、サービスを作るきっかけになりました。当時は小学生くらいだったので、友達が遊びに来てくれる感覚でしたね。働き方もそうだと思うのですが、インターネットがあることによって、物事に対する考え方や関わり方が変わってきていると感じます。今、生まれている様々なサービスが、次のインフラになりえることがあると思いますね。