2018.12.19
複業で得た実体験を漫画に!漫画家まめふさんインタビュー
「働く女性」や「こじらせ女性」など、女性の思考やふるまいを描写する漫画を描かれている、漫画家のまめふさん。その漫画は、複業することで得たさまざまな経験をヒントに描かれています。複業で得た実体験をネタに漫画を描く、まめふさんの複業スタイルについて、即戦力複業の求人サイト「コデアル」を運営する、コデアル株式会社代表の愛宕より話をうかがいました。
受身でしかできない仕事を続けるよりなら、好きなことをやろう!
愛宕 現在は20~40代女性に刺さるリアルをネタに漫画を描かれていますが、初めて描いたのはどのようなものだったんでしょうか。
まめふ 初めて漫画を描いたのは、中学のときにノートに長編漫画を描いたときだと思います。それよりも前、小学生のときは自分で話を作って友達とごっこ遊びをするのが好きでした。今思うとストーリーを考えたりするルーツはそのごっこ遊びだったかもしれません。
愛宕 イラストや漫画は中学の頃からずっと描かれていたんですか?
まめふ 高校の途中まで描いていましたが、受験のタイミングで、漫画を仕事には出来ないと諦め、描くのを辞めました。というのも、自分のなかでは「進学は就職のためのもの」というのが大前提だと思っていたので、たとえば美大へ進学できたとしても狭き門、そしてそこから絵を描くことを仕事にするのはさらに狭き門、一握りですよね。自分は絵が好きだけれど、うまいとは思っていなかったので、絵で食べるのは無理だと思いました。
その後、「メイクは顔に描く絵」「頑張ったらなれる職業」だと思いメイクアップアーティストを目指して美容専門学校に入学し、卒業後1年半はヘアメイクのアシスタントをしていました。ですが、メイクの仕事に対して受け身な自分に気づいたんです。
愛宕 受身というと?
まめふ メイクの仕事はアシスタントから入って、経験を積んで独り立ちするのですが、わたしはアシスタントの気持ちでしか仕事ができなかったんです。義務感、やらされ感が強くて…自分が独り立ちをするようなイメージが湧きませんでした。自分の心を見つめなおした結果、自分の好きなことしか仕事にはできない、好きなこと=漫画が描きたいという結論に達したので、ヘアメイクを辞めて、真剣に漫画家を目指し始めました。
愛宕 そういう経緯で漫画家をまた目指し始めたんですね。
「若い」だけでは乗り越えられない、働く女性のさまざまな苦悩に寄り添いたい
かしわまめふさんの連載漫画「少しの傷でもシミルちゃん」より抜粋。まめふさんの漫画をもっと読みたい方はこちら!
愛宕 OLの仕事と漫画のお仕事を並行して始めた経緯はどのようなものですか。
まめふ 漫画が箸にも棒にも掛からぬ状態の頃、アルバイト先が潰れたので、次は漫画に役立つ働き口をと考えていました。そのときから、なんとなく「女性向け」のものを描きたいなとぼんやり思っていました。
20代限定の就職センター(ジェイック)にも足を運んでいたのですが、漫画家を目指している事を話すと「20~30代女性の多くは会社員をしているのに、その人たち向けの漫画を描いているあなたが会社を知らないのはどうなの?」と言われ、その通りだと思いました。どうせならと、人から勧められた、自分では絶対選ばない「印刷会社の営業(実際はほぼ事務)」として働き始めました。それまで、自分で選んだことしかしてこなかったのですが、ここでの勤務が女性の現実(リアル)を知るきっかけになったんです。
愛宕 女性のなかでも「働く女性」や「こじらせ女性」など、女性の思考やふるまいを描写されている作品が多いですが、それをテーマにして書こうと思ったきっかけはなんですか。
まめふ 学生時代からよく悩みを相談されることが多いのですが、その根本的な原因を考えていくと、自分に自信がないという事にたどり着きました。日本人女性は「年齢=自分の価値」と刷り込まれてるので、ギリギリ26歳くらいまでは「若さ」で自分を保てるんですが、それ以降は、若さ以外の価値を自分に見出していないと、女性はとても生きづらくなります。年齢や他人からの視線に翻弄され、苦しみ悩んでいる人たちを身近に見て、すごくドラマチックに感じました。学校卒業まで大体同じ足並みだったのに、26~30歳くらいで女性はなにかしらの大きな決断を迫られますよね。その決断を後押しできるよう、漫画で応援しようと思いました。
愛宕 描かれている漫画は、自分が共感できるような内容で描いているんでしょうか。
まめふ 自分が共感できるものをテーマに、「自分も読み手」と同じ立場で共感できることを選ぶようにしています。
愛宕 働いていた会社の空気は、どのような感じだったんでしょうか。
まめふ 中小企業という感じでした(笑)。わたしは営業採用でしたがほとんど事務作業を担当していました。営業というと、男性の花形がやる仕事、という感じで、みんながなりたい職業であり、仕事にアグレッシブなガツガツした印象です。一方事務は女性が多くて、営業担当なら言われないような「あなたはそろそろプライベートを充実させなよ」ということを言われたりするんです。営業と事務という違いだけで、応援される視点が違うんです。「男性は仕事、女性は家庭」という固定観念ががちがちしているような会社でした。
愛宕 ああ…わかります。男だからこれ、女だからこれ、という決めつけは、コデアルではやりたくないなと思っています。
まめふ 日本の企業の99%が中小企業なんですよね。大企業の働き方改革とか、パワハラ、マタハラに対して対処してくれるのはほんの一部でしかなくて、実際の中小企業ではさまざまなことを言われながら女性は仕事を続けているんだと思います。日本の現実はそっちですよね。
複業を経て本業に。漫画を通してまめふさんが伝えたい思い
愛宕 複業(サラリーマンや事務のお仕事)をしていたことで、ご自身の作品づくりにどのような影響がありましたか。
まめふ 複業前は「漫画家になりたい」のみでしたが、会社にお勤めした事で女性を取り巻く環境や感情を知る事ができ、今は「自己犠牲に疲れた女性を漫画で手助けしたい」に変わりました。私にとって漫画は目的ではなく、ツールなんだと気が付きました。会社員時代に私と関わってくれた全ての人に感謝しています。
愛宕 複業されていたときの時間の使い方は、なにか工夫されていましたか?
まめふ 勤めていたときは、8:25~17:30の就業時間で、お昼休憩は45分。それに通勤時間もつく感じだったので、平日は勤務後に描くことがほとんどでした。わたしはデジタルで描くので、ipadか自宅のPCです。カフェ、自宅、図書館など、3,4箇所くらい集中できる空間があって、その日の気分で自分が集中できる場所を選んで作業するようにしています。
愛宕 場所を選ぶのは大事ですよね。僕も川沿いをランニングしているときにいいアイディアが浮かぶことがあります。何かやりながらの作業は刺激になっていいのかもしれないですね。現在は複業という働き方をやめ、漫画1本でやっていくことにしたそうですが、複業をやめる決断をした理由はどんなことでしたか。
まめふ 昨年2月くらいに出版社さんの担当がついて、連載を目指して頑張っていました。並行して勤務もしていたのですが、だんだんと仕事が負担になりつつありました。7月に結婚したのですが、「結婚するので辞めます」というのと、「結婚したけど仕事は続けます」と言ったあとに、「やっぱり漫画一本でやっていくので辞めます」というのと、どっちがいいのかなと考えて…この会社の常識的には「結婚するので辞めます」のほうが円満に退職できるのかな、という気持ちがあり、ならば結婚のタイミングで辞めようと。結局連載の話は流れてしまって、今また新しい企画を出したりとチャレンジ中です。
愛宕 企画をたくさん出してたくさん失敗して、というのはスタートアップやベンチャーと似ていますね!失敗した数は数知れずですが、失敗したからこそ学べるものも必ずありますよね。コデアルは失敗したなかでの数少ない成功したものです(笑)失敗を経て改善していくことで必ず良くなります。
今後は漫画に専念されるとのことですが、これからのかしわさんのビジョン(実現したいこと、目標)を教えてください。
まめふ 【女性達が自由に生き生き働ける社会に牽引していくこと】が、私の漫画家としてのチャレンジです!30歳までに・・・と焦る婚活。キャリアか出産・子育てのどちらかを諦める。頑張れない自分への無価値観…私が社会人を通じて見てきた女性達のリアルな現状は、年齢や一般常識などにより、制限の中で【苦労】【我慢】【自己犠牲】をすることが当たり前になり、不自由さを感じて悩んでいました。
勢いがある20代までは、「頑張ってがむしゃらに。」「とにかく必死で頑張る。」という生き方はガッツがある若者という印象を受けます。ですが、「自己犠牲をしないと自分に価値はない。」という意識を持ったままで、30代、40代を20代のような勢いだけの生き方で乗り越えるのは、年々苦しくなっていきます。そして世の中には、そういった価値観に縛られない自由度の高い人生の選択をしている女性もいます。
これまで【苦労】【我慢】【自己犠牲】を当たり前だと思ってきた頑張り屋さんな女性達に、無理をしない生き方があると知っていただくこと。
それは、ちょっとした気付きで変われるということ。そして、あなた自身は素敵な存在であるということ。
何より「今、あなたがどんなに悩んでいても、あなたも望む未来に行ける」ということを漫画を通じてお伝えしていきたいです。
自分を犠牲にする生き方ではなく、自分の【好き】【心地いい】【ワクワク】を取り戻して、気持ちのままに生きることは、夢物語ではありません。私自身の実体験や、これまでの相談者さん達の変化などをご紹介することで、リアリティのある漫画を描けるのが私の強みだと思っています。また、読者さんからのお悩みを募集して、漫画で悩み解決の手助けをしていく試みにも挑戦中です。これにより、読者さんに寄り添える距離感で活動していけるのではと感じています。
愛宕 ありがとうございました!女性に共感されるまめふさんの漫画、これからも楽しみにしています。
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編集後記
まめふさんの作品では、女性が一度は感じたことがある「モヤっと」した感じや、「〇〇なんだから…」と年齢や性差によって他人から投げられるちくちくした感じを、繊細に、でも鋭く表現されていました。複業によってさまざまな女性職員をリアルに観察したからこそ生まれたまめふさんの作品。これからより一層、働き方や生き方が多様化していきますが、まめふさんの「共感力」が、女性が自分らしく自分の道を歩んでいく後押しをしてくれる気がします。