2016.08.18
旅人が増えると、世界は平和になる。旅と平和代表取締役、佐谷恭さんインタビュー
今回は株式会社旅と平和代表取締役、佐谷恭さんとコデアル株式会社CEO愛宕の対談インタビューです。
旅行者が増えると、世界は平和になる。コミュニケーションを広めたい。
愛宕 旅と平和、というユニークな会社をやられていらっしゃいますよね?
佐谷 大学時代から旅をしてきました。訪ねた国の数は50くらいで、大学生活4年間のうち1年間は海外、半年は国内のどこかといった生活を送ってきました。そのあと大企業に入ったり、ベンチャー企業に入ったりしたあとこの会社を立ち上げました。
今やっているのは、旅と平和という会社ですが、僕のテーマです。今までは平和は国が作るものと思われてきましたけれど、インターネットが増えてきて、国境を超えたやり取りが増えると、それも変わってくるのかなと思っています。様々な国に友人ができるようになると、その国に何かが起こった時にに自分のこととして感じられるようになりますので、旅行者が増えると平和になると思っています。事業を通じてこの考えを証明しようとしています。旅する人を集めるというのが最初の目的で、いろいろな人をつなぐことをしています。
最初にやったのは、paxi house tokyoという飲食店です。創業した2007年はパクチーを知らない人が多くて、好き嫌いのはっきりする食材なので、事業としてありえないよね、と言われました。ただ僕にとっては旅先で出会う草なので、旅する人は知ってるので、旅人を選別できる道具なんです。当時流行っていたmixi、人をmixするというのを参考にして、paxという平和を表すラテン語をもじってpaxiです。
paxi house tokyoを作る前は、日本パクチー狂会の会長もやっていて、1年くらいパクチーの宣伝活動を続けていたんですね。自分の得意なことは飲み会の幹事だと思って、旅と平和という考え方に共感する人を集めて、ファンドレイジングをするパーティーをしようかなと思って事業を始めました。ただ自分でやったほうが面白いなと思って、パクチー専門店をやろうと思ったんです。ただやるだけでは受けないので、店とお客さんとか、お客さん同士のコミュニティを作ることができればいいなと思っていました。実際、お客さんが2人できても意気投合して4人で食べるとか、会った人どうしが一緒に起業するとかもあるんですよ。
愛宕 PAX Coworking, 東京シャルソンなど、その他に色々やられていらっしゃいますよね。
佐谷 私よく近所のカフェで仕事をしていたのですけれども、パソコン置いたままトイレに立てないし、混んできたら申し訳ないので、仕事をする場所を作ろうと思ったことがありました。やるからには一人でやっていたらつまらないので、面白い人が入れ替わり立ち替りきたら楽しいなと思って始めたのがPAX Coworkingです。
こういった場所が当時はほとんどなかったです。シェアオフィスという言葉が思いついたので、リサーチしたのですけれども、ほとんどのシェアオフィスで挨拶がない。受付とそれ以外の人のヒエラルキーがあるので、何も起こらないんです。もう少しコミュニケーションを作りたいな、とロンドンのコワーキングスペースの写真をヒントに得たのがPAX Coworkingです。
シャルソンは、飲食店やってると太るので、お酒を飲みながら走るフランスのメドックマラソンというものに参加してみたんです。このマラソンは変わっているので有名なのですが、参加してみてわかったのは、本質的なのは、変わってることではなくて、コミュニケーションだと感じました。中継ポイントで出てくるのがワイングラスなので、タイムを競うのでは無く、必ず立ち止まってワインをとって、グラスを回して、隣の人と話すんです。
それ以降毎年参加しているのですが、本気でメドックマラソンに出たい人が集まるパクチーランニングクラブというのを作り始めました。そのうちにメドックマラソンみたいなものを日本でも作りたいと思ったのですが、なかなかハードルが高い。簡単にしようと思って、コースを決めないで、寄り道して面白いコースを走ってもらいます。マラソンをして、6時になるとパクチーハウスで面白かったことを共有して、発信するというのが東京シャルソンの始まりです。
大多数の世界に出て行かない日本人たちを、1ミリだけでも動かす方が世界のためになる
愛宕 いくつも、事業を次、次、次とやっていらっしゃるんですね。なぜ、事業をやっていらっしゃるのでしょうか。
佐谷 面白い、が全てですね。継続性は考えず、絶対面白いから大丈夫、という感じで進めちゃっています。失敗しても死ぬわけじゃないし、得たものは還元できるので。
もう少し真面目に話せば、私が大学生の頃に比べると、日本が経済的に弱くなってきているんですよ。スマートフォンのようなデバイスがあるので、誰にも同じ情報が入るんです。だから東南アジアの人たちが強くなってきている。意識しないと負けてしまいます。どんどん事業をやっていかなければいけない、と思います。
愛宕 私も事業をいくつも失敗してきました。失敗の数の方が多いと思います。ただ何個かは残っているし、やっていれば信用もたまっていくので、事業はどんどんやった方がいいと思います。自分の好きなことや楽しいことを仕事のする、というのは学生の頃からなのでしょうか。
佐谷 大学卒業する時は就職したくないな、と思っていたんですよ。だけど会社入ってみたら、勝手にやってよくて、すごく楽しかったです。富士通の新卒採用の関西地区の責任者をやっていたのですけれども、ホールを借りて説明会を開くとか、学校に行って好き勝手にしゃべるとか、面白かった。仕事って面白いと思ったけど、この仕事誰でもできるな、とある日思っちゃったんですね。
会社がつまらなくなった時、サイバーエージェントのことを知って、自分の一個上の人が会社を作っていることに気づきました。会社を作れることは頭になかったので、会社を作れるんだ! と思って、会社を辞めて、しばらく友達のやっていたリサイクルワンという会社を手伝っていました。
ただ、何をしたいか、というものがないと思って、いろいろ考えていたら、日本国民として国益を守るために働くのではなくて、もう少し飛び越えた視点で見ると、国家の決断と個人の決断は違うなと思いました。地球人としての考え方で個人の決断が積み重なっていくと面白いなと思いました。国連かNGOに入ることを漠然と考え始め、それを見据えてイギリスの大学院に行って、旅と平和、というテーマで論文を書きました。
その大学はブラッドフォード大学といって、平和学の発祥の大学なんですね。週1回ゲストスピーカーが来て、いろいろ話を聞いていると、国連って何十年も経っているのに平和を作れてないな、と思ってしまいました。NGOや国連に行って世界のために働くよりも、大多数の世界に出て行かない日本人たちを、1ミリだけでも動かす方が世界のためになるんじゃないか、と思いました。
日本人は元バックパッカーでも、その経験を思い出としてしまっちゃう人たちが結構いるんですね。多くの人は就職・結婚・出産で旅をやめていってしまうんですね。ただ僕の会ってきたヨーロッパの旅人は、就職してお金ができたから、パートナーが出来たから・子供には世界を見せたいから、旅に出かけているんですね。同じ人間なのにライフイベントに対する姿勢が逆だな、と思いました。こういった現実の壁に阻まれてしまった日本人たちを動かしたいと思って会社を作ったんです。
面白いことがあればすぐに発信して始める
愛宕 お話を伺っていると、旅というものがすごくお好きで、日常の近いところで、旅で起こるようなことを広げていらっしゃるんだな、と感じましました。最後に何かメッセージをお願いします。
佐谷 旅で面白いのは、「え、こうだったんだ!」といった体験なんですね。ただそれって実は日常にいっぱいあります。それに皆さん気付いて欲しいんですね。そして、日常の面白いことを、どんどん発信して欲しいです。
私は、楽しいこととか、必要だと思うことをやっているだけなんですね。それでパクチーなど独自性のあることをやってきて、ある程度認められたというのは、自分の中ではかなり自信になっています。確かに、イベントなどやって、誰も手を挙げなかったら、悲しいですけれども、とにかく発信する、ということが大切だと思います。最近は発信するツールがよく出てきているので、事業にまでしなくても、Facebookページを作るだけでいいんですよね。5分でできるので、自分のやりたいことをやってみてください。