2016.07.11
VRとリモートワーク:ファンタムスティック株式会社 菅栄伸CTO
今回は、ファンタムスティック株式会社CTO、菅栄伸さんとの対談です。
コデアル株式会社CEO:愛宕
エンジニアとして海千山千の菅さん。事業である教育の話から、VR、キャリアの話まで、面白い話がたくさん聞けました。
愛宕 まず、本題に入るまえに事業について教えていただけますか?
菅 幼児から小学生向けに教育系アプリケーションの開発をしています。
教育というとお固い内容が多いと思うのですが、UI、UXを重視し、ゲーミフィケーションの要素も加えることで、楽しみながら勉強できるコンテンツを提供しています。
参照:http://www.playstudygo.com/
愛宕 年代で言えばどの層が対象なのでしょうか?
菅 幼児だと3、4才と、小学生対象です。
愛宕 幼児向けのアプリは全部無料のコンテンツとのことなのですが、会社としてはどのようにして収益を立てているのでしょうか?
菅 基本的に小学生向けのアプリで収益を上げています。
VRで変わるライフスタイル
愛宕 今後の働き方はどのような働き方がメインになっていくと思いますか?
菅 私としてはリモートワークがメインになっていくのではないかと思います。まずはエンタテインメントの分野ではありますけれども、VR技術が発展していくと思うので、リモートワークおいても近くにいるような感覚で仕事できるようになるのではないかなと思います。
今でもスタートアップがたくさん生まれてきていますけど、オフィスを持つということがそもそもなくなってきて、バーチャルオフィスのサービスも生まれてくるかな、と思います。
愛宕 なるほど。VRに関連して、今後30年で、ライフスタイル全般はどのように変わるのでしょうか?
菅 VR技術が発展すると、リモートワークがメインになってきますし、その分移動時間が浮きますよね。ただそんな中で課題になってくるのが、コミュニケーションになってくると思います。そうなってくるとエンジニアで言えばハッカーミーティングであるとか、ソーシャルでの参加を積極的にする人もいるでしょうし、浮いた時間全てを趣味嗜好に費やす人もいると思います。中には旅行で各地を転々としながら仕事する人も出てくるでしょうね。もしかしたら観光地も増えるかもしれませんね。
愛宕 私もリモートワークはコミュニケーションが課題だと思っています。弊社でなぜ最近リモートワーク求人が許容されるようになってきたかというと、Slackのようなコミュニケーションツールが発達してきたからだと思っています。
もう一つの課題は時間で、リモートワークをすることで逆に働き過ぎてしまう人がいることがあります。タイムマネジメントを自分でできる人には良いですが、できない人にはよくないかなと思います。効率ばかりに目がいくとよくないし、くだらない話ができるようになるといいですよね。正直なところをいうと、リモートワークは新卒の学生には向かないな、と思います。
そういった意味でも家やオフィス以外での労働時間をどう管理するかが大変です。女性の就業を促進できたりで、大手でも副業を許可するところが出てきていますけど、リモートワークを許容するルールの整備が足りないな、と思います。
ワークライフバランスとユーザーが作っていくクリエイティビティ
愛宕 菅さんご自身は趣味などありますか?
菅 ええ、音楽が好きで、アコースティックギターを5年くらいやっていますし、テレビゲーム好きは今の仕事のきっかけになっています。スポーツで言えば20年来の親友と毎週やっています。
愛宕 そんなに多趣味だったら仕事との兼ね合いが大変じゃないですか? それにゲームなど作る側になってしまうと、職業病ではないですけれども、ゲームプレイの感じ方が変わってきませんか?
菅 時間がいくらあっても足りないですね笑 一時期は作る側ではないですけど、開発のテスターをやっていたことがあって、その時はバグとかが気になってしまうのが純粋にゲーム楽しめなくて嫌だな、と思っていました。ただ、今は割り切るようになってゲームをやる時は子供に戻って純粋にゲームを楽しんでいます。
愛宕 ワークライフバランスとかありますけど、仕事とプライベートをうまく切り分けたいですよね。僕はあまりできない方なんですけれど。
菅 オンオフをきっちりと分けたいですよね。
愛宕 コデアルの場合はエンジニアの副業ですけど、Youtuberとか、自分の仕事と全然違うところで副業してたりするので、ああいうのはオンオフがすごいなと思います。
菅 Youtuberで思いましたけれども、最近ユーザーの手で広がっていくクリエイティビティというか、ユーザーにクリエイティビティを委ねるサービスが出てきてますよね。
最近AmazonがInspireという教育サービスを出しましたけれども、IT業界のオープンソース化は進んでいくのではないかなと思います。
いばらの道だったエンジニアキャリア
愛宕 菅さんのキャリアについてお聞きしても良いでしょうか?
菅 高校の頃からゲームが好きだったことからIT業界とコンピューターに興味があって、自分の考えたものを世に残したいと思っていました。18になったら即就職しようと思って、18から就活を始めました。
学歴のない自分がどうやったら会社にとってもらえるかを考えたときに、一番に思いつくのは資格だったのですけれども、面倒臭くて。そこで考えたのが社会経験で、派遣でIT業界の経験を積んで就職しました。
愛宕 社会経験でどんどんステップアップしていったということですね? 今と全然違う仕事だったと思うのですが、どのようなステップだったのでしょうか?
菅 一番最初は保険会社でした。汎用機のオペレータとして、データの受け取り・データ起こしをやっていました。作業が終わるとすごい暇で、その時間を使ってJavaの勉強をしていました。僕を雇ってくれた営業の人は1年くらいやったら開発させてくれるって言っていたのにさせてくれなくて、何にもクリエイティブじゃない! と思って1年半くらいでやめましたが笑
その次が論理回路設計の仕事でした。プログラミングではないのですが、面白そうだと思って始めました。そこで初めてUNIX系のOSに触れました。
それからweb系とかやってみたいなと思って、ちょうどSNSサイトの開発が盛んだったので、SNSの二次開発に携わりました。
愛宕 だいぶ今の仕事に近づいてきてる気がするのですが、論理回路の仕事からどうやって乗り移れたのでしょうか?
菅 当時の派遣さんってできない人でも派遣しちゃうんですね。僕としては現場で学ぶ勝負だったので、それを望んでいたので良かったのですが、Javaも勉強しているということで派遣してくれました。最初はテスターとして入ったのですけど、高評価をいただいて、テストリーダーになれました。エンジニアからは鬼軍曹と呼ばれていましたけど笑
それから次の企業ではサーブレットを使うようになって、フロント・A/Bテスト・MySQLとかを覚えました。ただ会話のない職場の雰囲気がすごく嫌で、自分の歯車感に嫌気がさして辞めました。
その後はネットワークエンジニアなどいくつかやって、最終的に今の仕事についているというわけです。
愛宕 様々なレイヤーの経験をされたのですね。
菅 ただここまでくると、職務経歴上・スキルが特化していないので、就職で言えば、器用貧乏に見られてしまいますよね。最終的にはこの仕事につけて良かったです。
愛宕 お話をお聞きするといばらの道だったことが想像できます。投げやりになったりはしませんでしたか?
菅 辛かったです笑 ただ負けん気だけは強かったので、周りの脱落していくプログラマと、自分のこれからの人生を考えたらやるしかない、と思ってなんとかやれました。
愛宕 働いていたらしんどいことはありますよね。働き方って、あんまり責任を負わなくて良い働き方もあるし、前回でリスクをとる働き方もあると思うのですけれど、人によって向き不向きはありますよね。派遣から正社員になって変わったことはありましたか?
菅 正社員になって初めて人間のマネジメントをやることになりましたけれど、それは僕にとっては大きな出来事でした。不信感を抱かせずに仕事をしてもらうかがいかに大事かを知りました。
こいつダメだ、と思っても自分ではわからないいいところを持っているんじゃないかって思うようにしていますね笑
愛宕 本当にそうだと思います。それは社内であっても、お客様でも、一緒ですよね。
世の中は弱者を助けてくれるようにはできていない。自分でなんとかするしかない。
愛宕 今やっと自分のやりたいことをできるようになったと思うのですが、今後のイメージなどありますか?
菅 そうですね、まだ夢途中ですが、プロジェクトの成功、というレベルまではできていないので、とりあえず成功させて、新しいものを作りたいと思っています。自分が動ける限り、生涯エンジニアでいたいと思っています。
愛宕 菅さんのエンジニアへの気持ちは高校の頃からですごく強いですよね。僕の場合は、20くらいになってやっと事業をやりたいと思ったのですが、それもネガティブな理由で、歌も上手くないし、イケメンでもないし、何もできないから会社をやろう、と思ったくらいなんですよね。
菅 僕はもともと4,5歳頃からプラモデルが好きで、小さい頃からものづくりが好きでした。生きていくならつまらない生き方はしたくないと思って。マネジメントはできるからするけど、実際やりたいのはずっとプレイヤーでいたいなと思います。
愛宕 自分が今後50、60歳になってどのようなライフスタイルで過ごしていると思いますか?
菅 50歳くらいになるとポンコツになってるでしょうね。ずっとプレイヤーでいたいとは思っていても、それはしょうがないですよね。いつか引退するときは来るかもしれません。仕方ないからマネジメントしてるかもしれないし、もしかしたらリモートワークもしてるかもしれません。
世の中弱者を助けてくれるようにはできていないんで、苦しいことの方が多いと思います。なんとかするしかないですよね。
愛宕 深い言葉ですね。。。 最後に何か一言ございますでしょうか。
菅 今後ファンタムスティックとしては、技術も進歩していますし、もっともっと、教育をクリエイティブにできると思っていてます。効率だけではないです、UI・UXだけが正義とは言いません。古来からある読み書きも当然大事なので、それと組み合わせた教育を上手く組み合わせて、実現したいなと思っています。