2020.06.18
体験レポート|リモートでの組織作り
先日2020年6月4日(木)に行われましたオンラインセミナー「リモートでの組織作り」の体験レポートです。
登壇者自己紹介
倉貫)学生時代からプログラミングを行い、エンジニアのクリエイティブで楽しい働き方を広めるため2009年に社内ベンチャーを立ち上げました。
2011年にMBOを行い、株式会社ソニックガーデンを設立しました。ひとりの社員が在宅勤務を始めたのをきっかけに、2016年に本社オフィスを無くし、社員全員リモートワークになりました。
管理職がいない、管理をしない経営スタイルで現在従業員が50人ほどに増え、会社が成長しつづけています。今日はよろしくお願いいたします。
愛宕)コデアル株式会社でCEOをやっています。即戦力エンジニア採用のプラットフォーム「CODEAL(http://codeal.work)」を運営しています。
14,000名ほどの求職者様に登録いただいており、約750社の企業様に受け入れてもらっています。
大学を卒業直後に創業しましたが、当時はお金が無く“ヒモ“をやっており、さすがに彼女(今は妻)の家には人を呼べないため、たまたまリモートワークを始めることになりました。実体験を踏まえてお話できればと思います。
リモートワークにおけるPeopleマネジメントとは?
愛宕)管理職がいない状態でのマネジメントはどのように行われていますか?
倉貫)一人あたり3~4つくらいのプロジェクトを掛け持ちし、各自が進捗管理、セルフマネジメントをしています。プロジェクトリーダーは特におらず、民主的にメンバーで話し合いをしながら仕事を進めています。
愛宕)御社に新卒採用の方はいますか?
倉貫)はい、新卒採用の方もいます。今年の4月にも1名新卒の方が入社しました。
はじめの頃は先にいるメンバーがメンターとしてサポートし、セルフマネジメントをOJT形式で学んでもらいます。
一般的な企業の場合、人が増えるとマネジメントコストが上がると思いますが、そのやり方だとボトルネックが増えるばかりで、販管費が増えます。
新人が自分自身でマネジメントできるようになれば、上司のマネジメントコストが減るので、新しい人を採用できるという流れになっています。
愛宕)メンターがつく期間設定はありますか?
倉貫)目安はあまりなく、人それぞれですね。
愛宕)リモートワークでOJTをする際はどのようにされていますか?
倉貫)コミュニケーションは、zoomでビデオ通話したり画面共有します。オフィスにいる時とあまり変わらないですね
愛宕)私たちもそうですが、リモートの方がURLを共有したり、画面共有したり教えやすい側面もある気がします。
倉貫)そうですね、オフィスに居るときとあまり変わらない感じはしますね。
プロダクトマネジメントをする際のポイントは?
愛宕)関わるプロジェクトの難易度の違いや、規模や予算が違うことがあると思いますが、どのプロジェクトにどの人が配属されるかなどは、どのように決めているのですか?
倉貫)セルフマネジメントのレベルが高い人は自分で決めてセルフアサインすることもありますし、案件が空いてしまい「仕事を探しています」とアピールをすると、誰かが仕事を依頼することもあります。
愛宕)新卒や中途などの会社全体の状況がまだわからない方や、セルフマネジメントを学んでいる段階の方はどのようにフォローされていますか?
倉貫)私たちの会社では1対1で「すり合わせ」という対話を行っています。月に1回、私や副社長、ベテランスタッフで1時間から1時間半を目安に本人がどんなことをやりたいのか、キャリア相談に近い事を対話します。
YWT(やったこと、わかったこと、次やること)のフォーマットで、どういうことやったか?何が出来るようになったか、その結果、何がわかったか?を共有してもらいます。
苦手なことも含めて本人から気づいた事を率直に言ってもらいます。
そこから、次にやりたいこと、将来どんなことをしたいのかがわかるので、本人がやりたい事に対して会社としてできることを伝えます。
本人がやりたい事をしているので、主体的に仕事がどんどん進みます。
全員が毎月「すり合わせ」を行うとマネジメントコストがかかるので、人によって「すり合わせ」を行う頻度の調整を行い、マネジメントコストを調整しています。社歴が長い9年・10年のベテランスタッフだと既に”すり合っている”ので「すり合わせ」は行っていません。
愛宕)お客様に請求する際に、マネジメント販管費を含めて請求しなくてよいのでしょうか?
倉貫)お客様へ請求しているコストと社内で管理しているコストは別と考えています。ソニックガーデンはサービス業なので打ち合わせの中でお客様の問題を解決することが仕事です。お客様へ価値を提供する価格と社内のコストは別で、自分たちの働き方やマネジメントコストをチューニングすることで利益の源泉になります。
愛宕)サービス業としてやられているのであれば、お客様が勤怠管理のシステムを作りたいとなった時に、必要がなければ作らなくていいという発想になるのでしょうか?
倉貫)まさしく、必要がなければ「作らない提案」が出来る会社です。
納品をしない月額定額の受託開発なので、一定額しかいただきません。
作っても作らなくても一緒で、お客様へ価値ある提案をすることで、お客様は無駄なお金を払わずに済みますし、本当に大事なところに投資できる。結果としてお客様が成長されて、私たちも長く付き合えることでお互い成長していくことができます。
愛宕)コデアルでも、紹介料は発生せず月額定額の費用をいただいています。人材紹介で年収の30%などと設定してしまうと、本当は必要がなくても人を採用してくださいとなってしまいます。月額定額で「欲しい物」を届けられるようになるのが大事だと思うので、僕も共感します。
倉貫)開発をするだけだと、お客様との接点は売る瞬間と買う瞬間だけになり、売り切りビジネスになります。
サブスクのビジネスが良いと感じるのは、良いことを提供し続けないとすぐに解約されてしまいますから、お客様に対して価値を提供しつづける必要があるところです。それは、サービスを提供する側、される側の双方にとってWINWINの関係性になるため、これからもサブスクのビジネスは増えると感じています。
愛宕)リモートワークに限ったことではないと思うのですが、最初の定額設定から料金変更など変遷はありますか?
倉貫)サービスメニューによって、ある程度機能ができたら、お客様との打ち合わせも週1日から月1日などに減るパターンや、逆にもっとパワーをかける場合があります。
複数のサービスメニューから選んでいただき、その中で出来る価値をご提供しています。
倉貫 義人さん(株式会社ソニックガーデン 代表取締役社長)
営業職×エンジニアにおける仕事の進め方とは?
愛宕)倉貫さんの会社には、営業職はいますか?
倉貫)外回りするような営業社員はいません。インバウンドで問合せがきた際、初回の説明はエンジニアが兼務で行っています。
初回の相談からサービスメニューの説明、機能拡張、運用、サービスオーバー、保守・・・と同じ人がずっと開発進行管理をしていきます。そうすることで責任をもってやれるし、やっている側もやりがいがあります。
自社サービスの仮想オフィス「Remotty(リモティ)」や「ラクロー」についてはプロダクトマーケティングの専門職はいますが、納品のない受託開発については、基本的に営業担当はいないですね。
採用のポイントは?
愛宕)ソニックガーデンでは、やりたいことをしながら、キャリアを広げていけるという構造だと思うのですが、採用するときに重要視しているポイントを教えてもらえますか?
倉貫)新卒の学生はポテンシャル採用です。正直、学生時代のプログラミングだけでは通用しないので、真面目で性格が良い人かどうかを見ています。
中途採用の場合は、私たちの会社にフィットするかどうかを重要視しています。こちらからアプローチするようなエージェント利用やスカウトなどのリクルーティングはせず、自社サイトからのエントリーのみです。自社サイトからエントリーされて入社されるまで、平均で1年から1年半ぐらいの時間をかけています。
愛宕)なるほど。中途採用の場合、1年から1年半の間はどのような事をされていますか?
倉貫)中途採用のシステムは「トライアウト」というのを使用しています。
技術力、パーソナリティを見極めるeラーニングのようなものです。「トライアウト」をクリアするまでに半年はかかります。
「トライアウト」をクリアした後はお試し期間として複業でお仕事していだたきます。
自社サービスの一部を手伝ってもらうことで、一緒に仕事をしていけるかがわかるので、徐々に時間を増やしてもらっています。
入社直前になると「社員じゃなかったの?」という状態になっていて、例えるなら結婚する前に同棲するイメージですね。
愛宕)入社前に時間と手間をかけてフィットするかどうかみていらっしゃるのですね。コデアルでも、ワーキングリクルーティングと言っているので共感します。
倉貫)判断基準としては、TIPS(テクニック(T)、インテリジェンス(I)、パーソナリティ(P)、スピード(S))の技術力、頭が良いか、人柄が良いか、スピード感が合うかをみて合致していればご一緒しています。
愛宕 翔太(コデアル株式会社 CEO)
#リモートチームビルディング への質問にお答えします!
愛宕)倉貫さんは、どんなプロジェクトが動いているか可視化しているのですか?知らないプロジェクトがあったりしますか?
倉貫)社内の情報は全てオープンになっているので、何が動いているかは知っている状態です。自分たちがやっていることを発信することも含めてセルフマネジメントと呼んでいます。
社内には日記で自分のプロジェクトを紹介したり、社内You Tubeのようなものがあって、情報をオープンにするカルチャーがあります。
愛宕)社外のお客様と社内のエンジニアさんが定期的に話すフォーマットや場作りなどの工夫などはありますか?
倉貫)サービスメニューによって打合せのタイミングなど決まっています。
都度お客様が困っている事を拾うのでフォーマットはなく、お客様とのやりとりはメンバーに任せています。
進捗状況を共有するためにエンジニアとお客様をつなぐプロジェクトマネジメントツールがあります。そのツールにノウハウが詰まっているので、中途採用で入られた方もセルフマネジメントが出来るようになっています。
愛宕)倉貫さんの書籍「ザッソウ 結果を出すチームの習慣 ホウレンソウに代わる「雑談+相談」」にもある、雑談力をチームに根付かせるには、どうしたらいいですか?
倉貫)リモートワークをすると仕事の報告・連絡・相談などの決まったことは、メールやチャットでできますが、これから考えたり、まだ決まってないアンフォーマルな情報を共有する「雑談」の機会が取りづらくなります。
ある企業は1週間に1回、1時間程度でアンフォーマルな話をする場を取るように社内に呼びかけています。
私たちは「朝会」を15分間行い、仕事に絡むちょっとした相談をしています。時間をとることがカルチャーを根付かせるためのひとつの手段だと思います。
愛宕)コデアルの場合、Slackを使っていますが、雑談チャンネルを分けると逆に書きにくくなりますよね。
倉貫)ツールの特性もあると感じていて、Slackなどのビジネスチャットは相手に伝えるために作られているので業務の内容も雑談の内容もすべて未読になります。
未読になるということは、聞き逃してもらえないことになります。情報が流れていってしまうSNSのように発散的なコミュニケーションにはなりません。
ビジネスチャットとSNSは、それぞれツールのコンセプトが違うため、相手がいなくても気軽につぶやけるコミュニケーションツールの代わりがほしいと考え、自社開発で、仮想オフィスの「Remotty(リモティ)」を作りました。
いまでは「Remotty(リモティ)」の仮想オフィス内で、みんなが独り言を書けるようになり、オンライン上でも気軽な雑談ができるようになっていますね。
愛宕)ソニックガーデン内で行っている、リモートでできる楽しいイベントって何かありますか?
倉貫)エンジニアが多いので、エントリー制でハッカソンという丸一日プログラミングを書くイベントを毎月行っています。毎回テーマを決めていて、例えば、「テレビ会議」がテーマだと、みんなで「テレビ会議室」を1日で作ります。参加したエンジニア同士で、最後に投票して優秀者には賞品がでます。
愛宕)楽しそうなイベントですね!コデアルでもハッカソンしてみようと思います!
今日はありがとうございました!
語る会メンバー
倉貫 義人
株式会社ソニックガーデン 代表取締役社長
大手SIerにて経験を積んだのち、社内ベンチャーを立ち上げる。
2011年にMBOを行い、株式会社ソニックガーデンを設立。月額定額&成果契約で顧問サービスを提供する「納品のない受託開発」を展開。
全社員リモートワーク、オフィスの撤廃、管理のない会社経営など新しい取り組みも行っている。
著書に『ザッソウ 結果を出すチームの習慣』『管理ゼロで成果はあがる』『「納品」をなくせばうまくいく』など。
ブログ:https://kuranuki.sonicgarden.jp/
語る会ファシリテーター
愛宕 翔太
コデアル株式会社 CEO
働くをもっと自由に。
即戦力エンジニア採用のプラットフォーム「CODEAL( http://codeal.work )」運営。
Twitter( @shotaatago )、ブログ( https://note.mu/shotar )では、エンジニアの採用やリモートワークを支援するためのノウハウや日々の思いを発信中。
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