2020.04.27
BtoBにおけるフルオンラインの未来|栗原康太さん対談インタビュー
BtoB営業・マーケティング活動のオンライン化やデジタル化を支援されている株式会社才流の栗原康太さんとコデアル愛宕による対談
株式会社才流(http://sairu.co.jp)の代表。BtoBマーケティングのコンサル/ 研修など、戦略立案から社内の体制作り、ベンダー選定、日々のPDCA推進まで、あらゆる施策を一気通貫で支援。(http://bit.ly/sairu-academy)
働くをもっと自由に。コデアル株式会社CEO。即戦力エンジニア採用のプラットフォーム「CODEAL( http://codeal.work )」運営。Twitter( @shotaatago )、ブログ( https://note.mu/shotar )では、エンジニアの採用やリモートワークを支援するためのノウハウや日々の思いを発信中。
BtoB営業やマーケティング業界の動きは?
愛宕)新型コロナウイルスの影響でマーケティングや営業が強制的に変わらざるを得ない状況になっています。BtoB事業において、どこまでがオンラインになるのか。栗原さんはどう見ていますか。
栗原)基本的にすべてがオンラインになると思います。
すでに商談・受注・契約といった一連のプロセスをフルオンラインでやっている会社はありますよね。
特に月額10万円以下の低単価商材であれば、昔から電話で売り切るスタイルの会社はあるので、難しくはないでしょう。
愛宕)才流さんでは、問い合わせ後どのような支援を行うのでしょうか。
栗原)これまで多かったのは、資金調達したスタートアップや大手企業の新規事業といった案件で、BtoBの顧客をどうやって獲得していくかという施策をプランニングし、実行支援するというものです。
具体的には、全体戦略の立案・年間の施策計画・予算配分を作り、月1~2回ミーティングしながら、PDCAを回していきます。
しかし最近では、具体的な要件に落ちている問い合わせが増えています。展示会を開催できないので、WEBサイトを見直したい、リスティング広告やコンテンツマーケティングをやっていきたい、営業資料を見直したいなど。内容はだいぶ変わってきましたね。
だいぶ変わりましたよね。
愛宕)「必需品」的な施策というのが求められているんですね。
栗原)そうですね。スタートアップのリスクマネーや大企業の新規事業案件から、今は本業のテコ入れにシフトしているということですね。
SAIRUさんHPより
人材に関する業界の動きは?
栗原)人材会社の動きに変化はありますか?
愛宕)新規にバンバン取っているということはありませんが、採用を止めてはいないです。ただ、採る人の基準が上がっているというのは感じますね。
栗原)リーマンショックの時は、エグゼクティブ層にはあまり影響はなく、ミドル層以下が止まったと聞きますが、実際そういう状況なんでしょうか?
愛宕)それは感じてますね。メンバークラス、マネージャー管理職、経営エグゼクティブと分けると動きが鈍っているのがメンバーのレイヤーのところ。
栗原)不要不急のもの、必需品には引き続きお金を使っているんですね。
コロナショックで不要不急になったもの、必需品になったもの
愛宕)Webカメラが品切れみたいなんですよ。ビデオ通話で商談する際、視線を合わせて話したいのに視線が合わないじゃないですか。
栗原)僕も買いましたよ。
愛宕)そうなんですね!
あと通信ですよね。リモートワークをしたり、家にいて動画を見る人が増えたりして、「通信容量のプランを上げようか」とか。そういう選択が起きている。
栗原)そういう意味だと、弊社に問い合わせを頂く業界にも変化がありました。これまではSaaS業界や先進的な企業が多かったのですが、直近1か月ではレガシィな産業の方や社員の平均年齢が比較的高いような会社からも問い合わせがきています。
マーケティングへの投資は不要不急だと思っていた会社も、展示会でリード獲得ができなくなり、不要不急ではなく、今すぐやるべきものという認識に変化しているんでしょうね。
愛宕)必需品か、資産価値の目減りしないものに動くという傾向がありますね。
オンラインのコミュニケーションツールは何を使ってる?
愛宕)オンラインでやり取りする中でお客様とのコミュニケーション手段や記録の残し方はどのようにされてますか?
栗原)商売柄資料を作る仕事なので資料を作って納品するという流れでやっています。
制作のプロジェクトでもドキュメントが大量に発生するので、その都度納品させていただいています。
愛宕)どんな階層にどんな資料を残すかというのは、お客様の要望に応じて決めるのでしょうか?
栗原)メールやSlack、マイクロソフトのTeamsなどでコミュニケーション取り、定例が終わったら資料を送るという流れです。
愛宕)まだ要項がまとまってない、例えばホワイトボードで軽く議論していたような話って今後どうなると思いますか?
栗原)プロジェクトの進め方によって変わってくると思います。
弊社の場合はプロジェクトの進め方自体が特徴的で、ワークショップをやらないんですよ。
社内で持っているフレームワークドリブンで、マーケティング成果を出すためのメソッドをまとめてインストールし、カスタマイズしてコンサルティングするという進め方なので。ゼロベースで議論するということはあまりないですね。
愛宕)共感します。型がひとつあって、はいって渡せるって素晴らしいことですよね。
弊社の場合は、自社サービスでユーザーに価値提供をするときに、ホワイトボード型の議論がよくあるんです。GoogleのJamBoadか、マイクロソフトのホワイトボードというアプリが、結構おすすめですね。
栗原)個人では使ったことありますが、プロジェクトでは使ったことがないですね。
愛宕)実はプロジェクトで使うのって、ツールを動かしながら話さなきゃいけないので、ファシリテーションの難しさがあるんですよね。「リモートワーク時代のファシリテーターとは?」というテーマで記事が書けそうなくらい(笑)
栗原)新しい職業が生まれる感じありますね。
愛宕)ありますね!オンラインMCとか、生まれそうです。
栗原)面白いですね。
決裁の取り方はどう変わる?
愛宕)SaaS事業のBtoBセールスの場合、上から落としていくのと現場レベルから上げていくのとではどちらが有効でしょうか。
栗原)基本的に上からじゃないと進まないというのが、BtoBマーケティング・セールスのコンセンサスだとは思います。
担当で完結して導入できる商材ならば良いんですが、日本の商習慣って稟議に次ぐ稟議で、これを下から上げるというのは難しいですよね。
愛宕)大変ですよね。
上司に説明するというのも大事ですが、そこにも人件費をかけるのは無駄ですよね。習慣的に3つくらいの企業を比較し、見積りを出し、上司に説明という流れはありますが、オンライン商談になるとそこも変わってくると思うんです。
弊社の商材では、オンライン商談で役員OKが出るとすぐに通りますし、運用チームを作ってもらえることがあるんですよ。ある程度の筋道をたて、運用のメンバーも一緒にオンラインミーティングをします。そのほうが早いですし、お客様にとって本当に運用できるかどうか、メンバーの動きを考えた上で決められます。
運用プロセスまで考えて商談するという意味では、これまでのように社内に持ち帰って検討という流れが緩和されてくると思いますね。
栗原)それ、めちゃめちゃ面白いですね。
採用のDX(デジタルトランスフォーメーション)化はあるのか?
栗原)BtoBの営業マーケのDXは不可逆的です。やることは頭の中で整理できているので、確信を持って進んでいます。
興味があるのが採用はどうなるのか。完全にDX化になり得るんでしょうか?
愛宕)かなりの割合がDX化されると思いますが、完全にはないと思います。
デジタルにならない部分っていうのは人の感情とか思いの部分ですね。
例えば人って嫌な人の指摘は嫌だし、聞きたくない。これは合理的には割り切れない部分ですよね。
採用人数などは合理的にDX化できますが、その職場で働いていて楽しいかどうかというのは、圧倒的主観なので、合理化できない部分なのかなと思うんです。
栗原)そういう部分を考慮すると、採用の過程でDX化されない部分はどこなんでしょう。例えば面接などはどうなるのかなと。
愛宕)我々は対等なやりとりができるプラットフォームを大事にしているので、「面接」ではなく「面談」と呼んでいますが、面談でも人間らしい部分を見るというのは大事なことだと思います。
人って、録画されたり、人に見られたりすることで発言の内容が変わることがありますよね。例えばクラスに30人いる前で「好きな女の子に告白してください」と言われても、嫌じゃないですか(笑)。心理的安全性によって発言や行動は変わるんです。
同じように、会社でも入社して3か月経った時、業務の範疇を「ここは伸ばそう」、「ここはやめよう」とか、言えるかどうか。働いてみないと意外とわからないんですよ。
そういった人間らしい部分を見ずにデジタル化だけを進めてしまうと、オンラインで便利になったとしても人間が「働く」を楽しめない。『1984』の小説みたいに、ビッグブラザーが支配する世界になっちゃうと思うんです。
それは僕たちの作りたい未来ではないんです。仕事を楽しめているかという曖昧なところは合理化されないし、だからこそGAFAに負けないっていう側面があると感じています。
この先に残る「人間」としての在り方
栗原)感情とか非合理で、何が残るのかという点は、僕も答えがないんですけど。今回メンバー全員がリモートワークになり、デジタル化を進めた結果、効率は明らかに良くなりました。少なくとも短期的には良くなるはずですよね。
一方で、淡々と仕事が進んでいくという側面を感じています。「何がやりたくてこの仕事しているのか」という問いが、僕らのようなデジタルに抵抗がない層でも出てきますよね。
愛宕)同じ思いです。
栗原)リモートでもできるんですが、楽しさが減ってしまう。僕の場合コンテンツを作ったり、社内向けに文章書いたりとかが多いんですが、「作業者」じゃないかと。
TwitterとSlack上に現れて、Zoomにも現れるbotじゃないか、みたいな(笑)。存在が希薄になっていき、ちょっとさみしいなとは思いますよね。
愛宕)栗原さんほどの合理的思考能力を持った人でもそう感じるわけですから、その何百倍も感じてる人がいるはずですよね。
栗原)何か残るといいですよね。
そして残る何かを、発見しないといけないという気がします。
Twitterのbot、Slackのbot、Zoomのbotになってしまうし、データ化が進むほどビッグブラザーが管理したほうが合理的になってくる。
だからこそ、そうじゃない部分を必死に人間側が見つけ出して、強固に保持しないと、ビッグブラザー側に倒れるだけ倒れてしまうんじゃないでしょうか。
愛宕)リアルな職場なら仲が悪い人同士で、「あの人とあの人コミュニケーションがうまく回ってないよね」とか実際にあるわけですが、オンラインだと簡単にミュートできちゃう。
でも働く上で違う価値観を見ないと、いい仕事ができないこともあると思うんですよね。だから、共に関心を寄せあう楽しい時間ってやっぱり必要です。そういう時間があまりにも無さすぎると、人間は「共有する時間」を欲するんだろうなって思いますね。
人とのつながりはより楽しくなる
栗原)そうですね。その流れで楽しくなるんじゃないかと思ったのは、デジタル化で自分と価値観の近い人をマッチングする精度が上がれば、より自分に合った会社に入れるんじゃないかということです。
先日聞いた話ですが、最初はコンテンツをまったく作れなかった会社で、社長を含めてレクチャーしながら1年くらいで書けるようになったと。コンテンツを出せるようになったらと何が起きたかというと、もともとコンテンツが作れる、文章が書ける人たちが入ってくるようになったというんです。情報をたくさん出すことで、その情報をもとに意思決定が可能になり、類友が集まるみたいな感じですね。
法人の購買においても、展示会の中から何社かでコンペするという意思決定ルートから、コンテンツを通した意思決定へと変化すると思っています。いろいろな会社が出すコンテンツから「この会社の情報発信、わかるんだけどあんまり好きじゃないな」というような、精度の高い意思決定が入ってくるようになる。
採用においては、さらにその傾向は高まるんじゃないでしょうか。
愛宕)それはありますね。今日も事前に栗原さんの発信内容ある程度は読んだ上で質問できています。
類友みたいな人とつながりやすくはなっているので、やりやすくはなってますよね。
栗原)「思い」とか「エモーショナル」な部分に、これまで以上にスケーラビリティが出てきて、届けやすくなるんじゃないかと思いますね。
株式会社才流(サイル)のBtoB営業・マーケティングのデジタル化支援
https://sairu.co.jp/dx_consulting
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コデアル株式会社の愛宕がファシリテーターを務める[ウェビナーイベント]
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https://www.codeal.work/contents/archives/8670
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