2025.12.26
【採用ノウハウ連載コラム】第一弾:採用戦国時代を勝ち抜くためにはまず市場を調査せよ

営業会社を起業後、大手人材派遣会社から依頼を受けたことをきっかけにRPO事業(採用代行事業)に進出。主にIT関連会社、人材派遣会社、建設会社などの人材不足に悩む企業の採用コンサルティング・採用代行を行っている。
本コラムでは、RPO事業者の代表である阿部様に、採用活動を成功に導くためのノウハウを全6弾に分けて解説していただきました。
第一弾では「採用戦国時代を勝ち抜くためにはまず市場を調査せよ」というタイトルで、採用活動に必要な情報収集のコツについて語っていただきます。
1.RPO事業に進出したきっかけ
私がRPO事業を始めたきっかけは、1本の相談電話からでした。福岡で営業会社を起業していたこともあり、様々な業種の方と繋がりがあったのですが、その中で全国展開をしている人材派遣会社の当時の九州エリアマネージャーの方からの着信で、「福岡支店で人材が不足しているが採用がうまくいかない。何か方法はないか」というのがおおまかな電話の内容でした。
その方とはよく会食に行く仲で、思いつきからビジネス上の相談をされたのだと思います。自分自身はサラリーマン時代に営業マンの採用を行っていた経験がありましたが、人材派遣業とは今まで縁がなく、力になれるかはわかりませんでした。しかし、コロナ禍で本業の商談が減っていてこともあり、「自分で力になれるのであれば」ということで会社に赴いたことを覚えています。
相談された具体的な内容は下記の3点でした。
- ①求人を出しているが応募がない。掲載サイト選びは適切か
- ②求人票の記載内容は適切か
- ③会社における採用フローは適切か
当時のその福岡支店では本社から独立した採用活動を行っており、営業事務が採用担当者も兼任しているという状況だったため、手探り状態で採用を行っていることがわかりました。これならば自分でも力になれる部分があると思い、今で言う「採用代行」の業務を引き受けることにしました。
2.市場を正しく分析することの重要性
まず私は「そもそも何故現在の採用媒体に求人を出したのか」というヒアリングから始めました。するとそこに明確な根拠はなく、「CMで見たことのある媒体だったから」「ネームバリューがある媒体だったから」というような媒体の特徴などを度外視した理由であったことが判明します。
そこで私はどの媒体が人材派遣会社の人材を確保するのに適しているのかを考え始めるのですが、その時点でひとつの疑問が生じます。
「人材派遣業界の市場はいまどのようになっているのだろうか」ということです。採用面から具体的に言及するのであれば
- ①人材派遣会社に登録する人材は多くいるが、競合他社に負けているのか
- ②人材派遣会社に登録する人材がそもそも少ないのか
採用活動を成功させるために大切なのは、採用したい人材の市場が上記2つのパターンのどちらなのかを正しく分析することです。この入口を間違えてしまうと、どんなに時間やお金をかけても採用活動を成功させるのは非常に難しくなります。何故ならばどちらのパターンに属するかによって採用手法が大きく異なるからです。それぞれのパターンにおける採用方針を業界問わず考えた場合が以下になります。
①市場に求める人材が多くいるが、競合他社に負けている場合
採用手法の精査、適切な採用媒体の選定、求人票やスカウトメールの差別化など、採用活動の質を上げることにより他社に流れていた人材の獲得が見込めます。具体的な方策は本コラムの第二弾~第六弾で述べていく予定です。
②市場において、求める人材が枯渇している場合
教育機関や資格スクールとの連携、親和性のある他業種からの転職斡旋など、新たなる業界への流入経路を開拓する必要があります。採用活動の中では難易度が高く、仕組みの構築までに時間がかかるのが特徴です。
実際に私が採用代行を行ってきた会社の多くは、上記の分析を行うことなく採用活動を行っていたため、しばしば間違った方法で時間とお金を無駄にしてしまった企業もありました。では、実際にどのような方法で採用方針を決めれば良いのか。一般的な方法と、独自の方法の2つをご紹介します。
3.市場の調査方法
1.有効求人倍率を調査しよう
まず一般的な市場の調査方法は、職業別の有効求人倍率を調べることです。有効求人倍率とは、1人の求職者に対して何件の求人があるかを示す指標で、「有効求人数 ÷ 有効求職者数」で算出され、労働市場の需給バランスを示す重要な経済指標です。労働基準監督署やハローワーク、大手転職サイトなどが算出データを公表しており、簡単に調べることができます。
ハローワーク公表の有効求人倍率
https://www.hwiroha.com/syokugyoubetsu_yuukou_kyuujinn_bairitsu.html
数字の高い職業ほど1人あたりの求人が多く、採用競争率が高い/人手不足であるということになります。例えば有効求人倍率が1以下であるにも関わらず採用がうまくいっていない場合、他社との採用競合で負けている可能性が高いと言えます。しかし、公表されている数字だけでは実際に求めている人材が本当に求人倍率が高いのか、何故採用がうまくいかないのかの分析がうまく行かないケースもあります。
2.媒体別の有効求人倍率を調べよう
求めている人材の具体的な有効求人倍率を調べるためには、多くの転職サイトや人材マッチングのプラットフォーム運営会社に問い合わせるのが確実です。例えば、前出の人材派遣会社で求人掲載の媒体選定を行う際には、10社以上の企業に問い合わせを行い、求めている人材の年齢・性別・在住エリア・希望雇用形態などを伝え、独自の有効求人倍率を調べるための情報を取得しました。
結果として、一般的に公表されている有効求人倍率と比べ、媒体ごとに得意としている求職者の種類やエリアごとの人材の偏りなども判明し、特に都心と地方では大きな数字の隔たりがあることがわかりました。
例えば、一般的な有効求人倍率は1を超えているが、Aという媒体で求めている人材の職業別有効求人倍率をエリア別に算出すると1を下回る=採用方法を精査すれば”勝てる採用”に繋げることができる、という具合です。
この前もった市場の調査を入念にすることで正しい採用媒体と方針を定めることができ、結果採用活動の成功に繋がるのです。
第一弾まとめ
多くの新興企業が生まれ、競合他社が乱立する現代において、採用活動は「採用戦国時代」と呼べるほどに競争が激化しています。その採用の戦いに勝利するためにはまず、自社の求める人材が市場においてどのような状態なのか、勝てる採用活動のフィールドがどこにあるのかを調べる必要があります。
正確なデータを基に正しい採用方針を決定することが、この戦国時代を勝ち抜くためのひとつめのカギとなるのです。
【第二弾:最適な採用手法と媒体の選び方】へ続く





