リモートワーカー、パラレルワーカー…場所にとらわれない複業スタイルが広がるなかで、仕事をしっかりとこなしていくためにも気をつけたいのは体調管理ですよね。今回は、自分のコンディションを整え、作業効率を上げるための健康術・食事術について、KARADA DESIGN & MANAGEMENT代表の山崎広治さんと、即戦力の複業求人サイト「コデアル」を運営するコデアル株式会社CEO愛宕の対談インタビューです。
山崎さん自身の体調管理術なども交えながら、リモートワーカー、パラレルワーカーがどうやって体調やコンディションを保てばよいのか、これからの働き方の要ともなる健康管理についてお話を伺いました。
山崎 広治さん
KARADA DESIGN & MANAGEMENT代表
フードコンディショニングアドバイザー
食事戦略コンサルタント
一般財団法人内面美容医学財団(IBMF)公認ファスティングカウンセラー(FC)
オーガニックやナチュラルな食事を通してコンディションを整えることで、身体と心のパフォーマンスUPやダイエットなどをサポート。食事アドバイス・食ライフスタイルの提案、コンサルティングなどを手がける。
著書:働く男女のための栄養学入門(マイナビ・2014年)
毎日の食生活が、仕事のパフォーマンスを変える!
愛宕 早速ですが、リモートワーカーやパラレルワーカーが健康を維持するために、最低限これをやっておいたほうがいい!ということはありますか?
山崎 そうですね、まずそういう人たちは、基本的には机の前に座ってパソコンでの作業をしている方が多いと思います。動くきっかけや、時間があまりないんですよね。お昼ごはんを食べに外に出ることもあまりないかもしれません。そんなとき、口にする食べ物の栄養にはぜひ気をつけてほしいですね。
愛宕 それは具体的にはどのようなことでしょうか?
山崎 たとえば、血糖値が上昇する白飯やパン、麺類などの炭水化物はあまり摂らないようにし、たんぱく質を多く摂取するようにするとかです。血糖値が上昇すると、脳のパフォーマンスが落ち、生産性が低下するということがアメリカNASAの研究で発表されました。それから徐々に企業でも、食で血糖値やパフォーマンスをコントロールするための取り組みが始まっています。たんぱく質は、肉や魚に含まれる栄養素。気軽に食べられるものだと、コンビニ各社で販売している「サラダチキン」がとても優秀です。ただし、添加物が多いものは注意が必要です。
愛宕 山崎さん自身は、普段のランチなどで気をつけていることはありますか?
山崎 わたしは、ランチでは炭水化物を摂らないようにしています。また、頭を使うとつい間食で甘いものを食べたくなってしまうのですが、それも血糖値を上げてしまい、眠くなってしまうんです。なのでチョコレートなどのお菓子も食べないように気をつけています。
愛宕 脳の糖分摂取と思っていましたが、甘いお菓子もあまりよくないんですね。お菓子でたべてもいいものはありますか?
山崎 間食に向いているのは、ナッツやアーモンドなどです。噛むことで脳に刺激がいきますし、血糖値もそんなに上がらないです。
愛宕 あとちなみに、お昼ご飯を食べないっていう選択肢はアリなんでしょうか?
山崎 血糖値の上昇や、それによる作業効率を考えると、お昼ご飯を食べないのはアリですね。また、1回の食事の量を減らして、回数を増やして小分けに食事するのも、作業効率を落とさずに居られるので効果的です。
愛宕 先ほどから「血糖値」がキーワードとして出ていますが、気軽に血糖値を測定するアプリなどはあるんでしょうか?
山崎 今はありません。糖尿病などの患者さんが自分で測定するのに、少量の血液を採取して検査する機械はありますが、あと2、3年もすればウェアラブルで測れるようになると思います。
愛宕 体温計くらいの手軽さで、血糖値を数値として確認できればいいですよね。
山崎 そうなんです。今は、血液採取以外に血糖値の測定は難しいので、血糖値が上昇するきっかけである食べ物の摂取について意識するのが一番の近道かなと思っています。自分が口にしたものを全て記録に取っておき、何を食べたときにどうなったか、振り返ることで自分のパターンを知ることが大切です。口にしたものを写真に撮っておき、それを栄養士さんに診断してもらえるアプリなどはありますよ。弊社もアプリ会社と、現在オリジナルの食事管理アプリを使ったプログラムを製作しているところです。
食品を購入するときに気をつけてほしいのは、「どんなもので作られているのか」を確認することです。添加物がたくさん入っていないもの、原材料がシンプルなものかどうかを、買う前にまずしっかり確認することを習慣づけることで、自分が普段どんなものを口にしているのかを把握することに繋がります。
いい仕事をするため、結果を出すためにも、カラダは資本
愛宕 そもそも、山崎さんは食べ物や栄養についての興味が昔からあったんでしょうか?
山崎 昔は食べ物や栄養自体にはじつはあまり興味はありませんでした。大学で学んでいた国際法や環境学がきっかけで国際NGOやNPOで活動することになり、そこで出会ったオーガニックやフェアトレードをテーマにした食品(チョコレートやコーヒー)などを広めて行きたい。そのために食や音楽、アートなどが楽しめるカフェを将来創りたい、そのような想いで飲食業界に飛び込みました。
大学生の時に小さなオーガニックカフェでスタッフをしながら、お店でオーガニックやフェアトレードをテーマにしたイベントをさせてもらうことが増え、そのあたりからだんだん環境と食、健康の関係について興味を持ち始めたように思います。飲食ベンチャーでは、インナービューティーをテーマにフレッシュジュースやスムージー、スンドゥブチゲ専門店など様々な業態で経験させてもらったことで、食と健康に対する興味がより一層強まりました。そこで、改めてオーガニックや食、健康についてもっと学びたい気持ちが出てたこともあり、それを実践してるカフェやレストランで勉強したいと思い、30歳で転職しました。
愛宕 「食事によって身体の調子を整え、仕事のパフォーマンスを上げる」という考え方が興味深く感じます。その考え方について詳しく教えてください。
山崎 『コンディション』や『コンディショニング』と聞くと、スポーツ選手やトップアスリートのものと思われがちなのですが、じつは毎日の仕事やプライベートで毎日忙しい生活を送っている私たちビジネスパーソンや日々大きな選択や決断をしている社長、経営者にこそ必要な “スキル” であると私は考えています。
いい仕事をこなすためにも、ビジネスで結果を出すためにもカラダが資本です。健康なカラダがなければ、どんな理想やビジョンを持っていても形にしていくことができません。カラダの『コンディション』が良くない状態で、どんなに気合いで頑張って仕事をしても結果は出ませんし、むしろミスが重なり、取り返しのつかない大きな問題に繋がりかねません。
また、『コンディショニング』と『コンディション』は似て非なるものでもあります。『コンディション』とは、その人の体調や状態である「カラダの調子」のことを意味します。一方、『コンデイショニング』とは、その『コンディション』を常にベストな状態に保つこと、その管理方法であり、特に毎日欠かせない食事こそが『コンディショニング」おいて基礎部分を作る大事な要素であると考えています。
“You are what you eat”という言葉があるとおり、私たちのカラダは私たちが今まで食べてきたものでできており、毎日動かせている「カラダ」はもちろん、アイデアや発想を産む「脳」も食べ物から作られています。「食」とは“人に良い”と書くように、良い食べ物こそが良い「カラダ」と「脳」を作るのだと思います。
愛宕 「食」は「人に良い」と書く、確かにそうですね!毎日の食べ物を選ぶ重要性が分かりました。リモートワーカーやパラレルワーカー(フリーランス)の食事や健康状態について、どのように考えていますか。
山崎 一人で仕事をするとなると、時間とともに食生活も自分でコントロールしなければなりません。私自身も独立してからフリーランスとして、外に出て現場で仕事をすることもあれば、屋内に篭ってひたすら事務やクリエイティブな作業をこなす時もありました。外に出て仕事をする時は忙しくてゆっくり食事をする時間もなく、急いで胃袋に駆け込むような状態。屋内で仕事をしていた時は逆に外出するのも億劫になり、デスク上で食べられる簡単なものをつまんだりと栄養状態が偏ってしまう食生活を送っていました。
誰かが用意をしてくれたり、管理してくれることがないだけに、ある意味、何をいつどこで食べるかも、あくまで自由な状態なゆえ、体調管理はとても難しい部分もあるかと思います。それにより、体調を崩したり、風邪を引いたとしもあくまで自己責任、さらに生産性が下がり、売上が下がったとしても、それも自己責任。
プロフェッショナルとして仕事をしていくためにも、やはり食事や栄養をしっかり管理し、健康状態を常にベストな状態(「ベストコンディション」)を保っていくことがこれからのリモートワーカー、パラレルワーカーにも欠かせないと思います。
時間配分、運動、睡眠、メンタルヘルス…できるところから自分のやり方を見つけよう
愛宕 フリーランスだと自分の働く時間も自由に決められますもんね。ある程度の自由のなかで、ペース配分を考えるのもフリーランスの難しいところです。山崎さんはどのように仕事の時間をコントロールしていますか?
山崎 気をつけているのは、出勤退勤時間の管理です。見える化して、なににどれくらい時間がかかっているか把握するようにしています。わたしは「スマレジ・タイムカード」というアプリで出勤、退勤、休憩時間などを管理しています。また、仕事をだらだらしないように、ストップウォッチで時間を区切って効率化アップを図っています。「この時間までは集中する」と決めるのもいいですね。
愛宕 数値を見える化するのは作業効率を考える上では重要ですよね。また、在宅勤務の人はあまり運動する機会がないと思うのですが、山崎さんは気をつけていることはありますか?
山崎 座っている時間が長いと血流が滞って、肩こりなどの原因にもなります。おすすめしているのは30分に1回は立つこと。太ももや背中、胸の筋肉など、身体のなかの大きな筋肉を少しでも動かすようにしましょう。煮詰まったときは机での腕立てやスクワットなども効果的です。
愛宕 たまにするんですが、立ちながら仕事するのはどうなんでしょうか?
山崎 それもいいと思います!ただし立つときは、その姿勢に注意が必要です。傾いたり偏ったりした立ち方だと、身体が歪む原因になってしまうので、立つときは背筋が伸びた良い立ち姿勢を心がけましょう。
愛宕 最後に、質のよい睡眠をとるために気をつけるべきことはありますか?
山崎 当たり前のことですが、目に刺激を与えないことです。寝る前にスマホを見ないなど、それだけで寝つきに関わります。自分の体に合った枕も大切です。わたしは低反発のものなど、なるべく試すようにしています。
愛宕 仕事の締め切りや、やることに追われている精神的なストレスで眠れないときの対処法はありますか?
山崎 そういう時は、アドレナリンが出てしまっているので、温かいハーブティなどの飲み物で身体を温めてみてください。副交感神経が優位になって気持ちも落ち着いてきます。また、眠気を誘うホルモンであるメラトニンはアミノ酸が原料で、アミノ酸はたんぱく質から作られるので、お味噌や温かい豆乳などを飲むと、脳が落ち着いてぐっすり眠れると思います。
愛宕 経営者や、期待値が上がってくる年齢はメンタル面でのサポートもあるといいですよね。
山崎 フリーランスも経営者も、常に不安な面はありますよね。落ち着かないときは、不安に思っていることを書き出したり、瞑想したり、アロマを焚いてリラックスしたりして、精神衛生を保つのも、仕事の一部ですよ。
愛宕 ありがとうございました!早速今日からいろいろ実践してみます。