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未知の遭遇のため長く楽しく働く:ITコアCEO、山田敏博氏

今回はITコアCEOの山田敏博さんとコデアル株式会社CEO愛宕の対談です。IT業界で経営者の経験を多く積んできた山田敏博さん。経営の考え方や、今後の社会での生き方について語っていただきました。

愛宕 まず会社の紹介からお願いできますでしょうか?

山田 私が大学生の頃はコンピュターが少しずつ流行りだした頃でした。たまたまSEをやっている人と出会って、SEは今後伸びる仕事だと思って富士通に入りました。有限要素法とか、AIなど一通りの技術を触れたら、リクルートに転職し、システムコンサルティングをやっていました。リクルート事件の頃でした。
その後独立をして会社を立て、VisualBasicのruntimeのようなパッケージを作っていたのですが、うまくいかなくて閉じてしまいました。
そうしたらインターネットの時代がやってきて、今の会社を1998年に立ち上げました。リクルートのインターネットのサーバー運用監視のサービスから始めたのですが、インターネットが10倍100倍とすごいスピードで成長していて、NTTやNRIなどの大手が参入したので、レンタルサーバー販売などが中心の業務になっていますね。市場が大きくなってくるとどうしても資本力の大きなところが強くなってしまいます。


参照:ITコアホームページ https://www.itcore.jp/

愛宕 この頃ってすごい時代の変遷ですよね。

山田 5年で技術が変わってしまいますからね。新しい時代のサービスを作るっていうのを売りにしてやってきたのですが、ITの行きづまり感があって、一昨年あたりから、営業アウトソーシングなど、事業領域を広げているというのが最近の状況です。

オープン化の流れなどあり、移り変わりの激しいIT業界でやってきたのがこの会社ですね。まあ今は自動車とか他の業界でもそうですけれども。

安くていい製品を提供しても使ってくれなかった

愛宕 会社を始めてみようというきっかけは何だったのでしょうか?

山田 父が車のディーラーの社長だったからか、子供の頃から社長になろうという目標は漠然と持っていました。それと性格的に自分の自由にやりたいとというのがあって。

愛宕 サラリーマンエンジニアの頃から、会社を始めて変わったことはありますか?

山田 会社作って一番最初に驚いたのが、安くていい製品を提供しても、使ってくれないんですよ。当時はバブルのはじけたくらいで、余裕があったので、部長クラスでも決裁権を持っていたんですよ。安いからって言って変える方が面倒だし、自分の責任を避けるので。せいぜいできたのが、他社に断られた、しょぼい仕事で。本とかで他社にない技術を持たなきゃいけないとか見てましたけど、そういうことか、と実感しました。今はまだ違うんですけどね。そういう面では今の方がやりやすいです。

愛宕 コストパフォーマンスに対してシビアな時代になった感じがしますよね。

人を成長させるところに付加価値はある

愛宕 1つ目の会社を作ってから、一旦事業を畳んだ理由は何かあるのでしょうか?

山田 まあ事業モデルとして、安定した収益を作れていなかったからですね。30名くらいにはなったんですけど、売却してしまいました。そこからもっと拡大していくっていう段階で、どうもうまくいかなかったです。エンジニアだったので、経営があまり得意でなかったというか。

愛宕 なるほど。そのような30人抱えるような企業の経験をされて、今ももう少し小さい企業の社長ですが、それぞれの良さはありすか?

山田 いろいろと経営コンサルなどを受けて、自分の分析をして感じたのが、孫さんとか、柳井さんとかは業績拡大それ自体に喜びを感じる人だと思うんです。ただ自分はそうではないなと思って。業績が拡大しても、社員や株主のためで、自分は疲れるだけ、みたいな。今は個人でも活躍できる社会になっているじゃないですか。

愛宕 会社を運営する時の使えるツールのコストが小さいし、リモートワークもできますしね。

山田 昔は人を採らないと業績を拡大できなかったんですけど、そもそも中小企業だと人も取れないし、今は逆に人を採るとコストばかりかかります。

愛宕 コデアルという会社は副業のサービスですが、うちでも人を採れなる余裕はないけれども、かといって優秀なメンバーに関わってもらう必要がある、といった苦肉の策で編み出した部分があって。

山田 なるほど、自社ニーズですね笑 私もちょっと前から常駐サービスを始めたのですが、Amazonなど強くなって、日本が付加価値をどこで出すのかを考えた時に、人を成長させるところに付加価値を出せるなと思いました。成長させる場として派遣で働くという機会は良い側面もあると思っています。ただちょっとそれも時代的に難しくなっているなと思って、昨年から営業に梶を切っています。ただ、営業力があっても商品力がなければ売れないので、営業力プラスサービスを作る力をつけよう、というコンセプトで、ウェブマーケティングの力などをつけさせようと思い始めた頃です。

会社の経営はまちづくりのようなもの

愛宕 働き方として、フリーランス・エンジニア・経営者と色々なやり方があると思うのですが人によってどれがいいか、など全てを経験されてきている山田社長からご意見ありますか?

山田 自分が何に喜びを感じるかですよね。一人でいるとか、みんなといるのが好きとか、権力が好きとか。個人事業主は、自分の関心のあることをできますが、目先の仕事を取らないといけないので、とにかく目の前のことに追われがちになるとか、社会的が低いであるとか、社会保険制度の恩恵を受けられないとか、様々なデメリットがあります。正社員だと、世間体の良さと社会保険制度の良さと、安定性はありますよね。そういったことを加味する必要はありますよね。

愛宕 私自身でいうと、自由でありたいという気持ちが強いです。コデアルという会社で大事にしている価値観は、コデアル船中八策として明示しています。

山田 こういったものは思い切り打ち出していくべきだと思いますよ。これを磨いていくことが自分のためにも、社員のためにも、お客様のためにもなる。一回作ってしまっていいんです、思いついたら変えていく、ということでいいと思っています。私も社員が多いときは全体会を定期的に開いてビジョンを伝えていました。

愛宕 私たちは今でこそビジョンを掲げていますが、実は前職の会社で働かせていただいていた当時は、聞く目線だと正直面倒くさいなと思っていました。それがビジョン、ミッション、価値観を明示するようになっているので、なんだかなwと。。。聞く側はどういう風に解釈すれば良いのでしょうか?

山田 自分と完全にずれてると、聞いてる方も辛いですが、合ってても現実感はないかもしれないですね。今の仕事を黙々とやっている時は考えないですけど、新規事業をやる、などなると気にするかもしれないですね。Googleみたいに自由度が高くなってくると、よりビジョンは重要になってきますよね。

会社を経営するときに、シティ構想というのがあって、会社を一つの街にたとえます。自由な街であるとか、パリのような街であるとか、というように、その街に特徴を出すんですよ。その街に働きたい人が来て、そこで生活するのです。経営理念というのも、街づくりのようなもので、そこに集まってくる人が楽しく暮らし・働けるようにする市長さんの役割で作るといいかもしれませんね。他の街とは差別化しなければいけませんよね。

ロボットが普及するとベーシックインカム制度が浸透するかもしれない

愛宕 これからは、今後30年のライフスタイルがテーマになります。

山田 働き方という観点では、技術革新によって(自動運転やドローンなど)より生産性が高まって、企業淘汰が進んでいくと思います。AmazonやMicrosoftなど強い会社は強いので、中間の会社は厳しくなってくると思います。逆に個人に近いゲリラ的な会社は生きやすくなるのではないかなと思います。同じように個人が力を持つと思っています。

私は今Happy Work 80というような指針を立てているのですが、老後の不安を解消してくれる、それと自分の資産を持ちましょう、というのを推奨しています。資産というのは不動産や株だけじゃなくて、Facebookやブログなどの個人コンテンツも含まれます。そう言ったことが発展するんだろうな、と思います。プログラマやエンジニアも、今の仕事を減らして、自分のメディアやコンテンツを持つことがいいのではないかな、と思っています。

愛宕 個人も会社も、中途半端が一番良くないですよね。例えば、技術革新によって、自動化された作業の雇用は減ると思いますが、他のことでは増えるたりするのでしょうか?

山田 末端は増えるでしょうね。iPhoneを見ても、携帯電話会社は減りましたけれど、パーツは増える、というように。ドローンも、それ自体は進化するし、インフラも増えるでしょうね。ただ、労働集約型ではなくなっていくので、ノウハウや技術がより重要になってくると思います。

愛宕 そんな中での社会制度として、ベーシックインカムについてはどう思いますか?

山田 流れとしてはそうなると思いますよ。ハードルはありますけれども。ロボットがいろいろ生産できるようになれば、遊んで暮らせるようになるじゃないですか、でもそれはそれで問題があるので、ベーシックインカムのようにロボットの生み出した利益を皆に配分するのは不可能な話ではないと思いますよ。

愛宕 私は、ビル&メリンダ・ゲイツ財団のようなものがあって、中間的な層がいなくなってきた時に、従来の仕組みの不足部分を、適切なお金の配分を政府でないところが一部していくという形がもっと出てくるのではないか?と勝手に想像していたりします・・・日本の場合だと寄付をしづらいですよね。

ただ、ベーシックインカムのようにそもそもお金のない状態で生きて行く術があるのであれば、それでいい気もします。

世界の流れを読める人になりたい、そして未知の遭遇のため長く働く世界を

山田 そういえば、今の時代はもう豊かな時代で、この前ブックオフに行ったんですけれど、100円でこれだけのものを買えるのかとびっくりしてしまいました。

愛宕 このクオリティのモノをこの価格で買えるのかと日本では驚きを感じますよね。海外に行った時に、より一層そのことを感じます。

山田 考え方の発想の訓練というか、幸せを見つける力が重要かもしれないですね。30年間で日本は変わっていくでしょうけど、いいところを見つけて自分の中に取り入れていくことがいいでしょうね。エンジニアの方も技術力を学ぶのはもちろんですけど、今後どっち行ったらいいんだろうと悩むと思うので、流れを読める力とか、人間力を学ぶ必要はあると思いますね。

愛宕 技術がすごい人とセールスが得意な人が一緒にやっていけるような環境は大事だと思っています。自分の苦手なものを補完してくれる相手を探すのは一つの手だと思います。

山田 そういうのをチームひっくるめたプロジェクト的な副業を支援してもいいかもしれませんね。リスクエッジにもなりますし、起業支援になるかもしれないですね。

愛宕 作るものにも価値はありますが、それよりも一緒にやれる人を見つけることに価値があるかなと思います。最後に今後30年の生き方について何かありますでしょうか?

山田 先ほど話したHappy Work 80ですが、それは未知との遭遇を期待しているからなんですね。今の時代、今の世界に対してのドキドキはそこまでないと思います。ただ、未来はわからないし、怖いものなので、時間惜しんで働いて命を縮めるよりは、消耗しないで働いて長く生きて未知と遭遇することを重視して欲しいですね。

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