営業会社を起業後、大手人材派遣会社から依頼を受けたことをきっかけにRPO事業(採用代行事業)に進出。主にIT関連会社、人材派遣会社、建設会社などの人材不足に悩む企業の採用コンサルティング・採用代行を行っている。
本コラムでは、RPO事業者の代表である阿部様に、採用活動を成功に導くためのノウハウを全六弾に分けて解説していただきました。
第二弾では「最適な採用手法と媒体の選び方」というタイトルで、採用手法の種類やその選択の仕方、最も適した媒体の選び方について語っていただきます。
1.採用手法の種類について
本コラムの第一弾では、採用活動開始にあたっての市場調査の重要性についてお話させていただきました。続く第二弾では、市場に求める人材はいるが、他社との採用競争に負けている場合を想定し、適切な採用手法と媒体を選定する方法をお話させていただきます。
今まで採用に携わってきた方であれば主な採用手法については既知の情報かと思いますが、改めてそのメリット・デメリットを精査し、今後の採用方針を整理する機会としていただければ幸いです。企業が人材を確保するための採用方法の種類は以下になります。
1.リファラル採用
リファラル採用とは、自社の従業員が友人や知人など信頼できる人材を紹介し、採用につなげる手法のことで、最もコストが安く、そして信頼性の高い人材を確保できます。しかし、リファラル採用の難点は従業員へのモチベーション付けが難しく、また、継続性が難しい点にあります。そのための解決策として、リファラル採用に対してインセンティブ制度を設け、定期的に社内で周知することが効果的です。その際に気を付けなければならない点が2点あります。
- ①紹介活動が反復継続的に行われ、実質的に紹介ビジネス化していると判断されると、社員の紹介行為が職業紹介とみなされるリスクがある。
- ②社員への報酬が高額で、“紹介そのものへの対価”と判断されると、職業安定法上の「報酬の供与禁止」に抵触する恐れがある。
上記の法的リスクを回避するためには、就業規則や賃金規程に制度として明確に規定し、対象・条件・金額・支給タイミングなどを定めたり、報酬を「社員の業務への協力として給与・賞与の一部」として支払う形にすることで、職業安定法の「報酬の供与禁止」の趣旨から逸脱しにくくする必要があります。
2.求人広告の掲載
求人広告の掲載による採用とは、企業が求人サイト、情報誌などの媒体に自社の募集情報を掲載し、それを見た不特定多数の求職者からの応募を募る採用手法です。採用手法の中では比較的安価な価格から始めることができ、一般的に”採用活動”と言うとこの手法を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。しかし、採用活動で苦戦している企業がこの手法をとっても、人材獲得に繋がらないケースが増えてきました。その理由は以下の2点です。
- ①ダイレクトリクルーティングサービスの普及
最近ではダイレクトリクルーティングサービスが広く普及し、求職者は自分で求人を調べなくても自分に合った職業情報が届くようになりました。数多くの求人がネットや情報誌に存在する中で、求職者全部の求人情報に目を通すことは難しく、結果として掲載型の求人は埋もれやすくなっています。 - ②SNSの普及
ダイレクトリクルーティングサービスと同様に、SNSでも求人情報を広く多くの人に届けることができるようになりました。やはり目につきやすいSNSでの求人と比べると掲載型の求人は埋もれやすいのが実情です。
市場に人材はいるが、他社との採用競争に負けている場合、掲載型の求人では採用活動を成功に導くことは困難を極めるでしょう。
3.ダイレクトリクルーティングサービスの利用
ダイレクトリクルーティングサービスを使った採用手法とは、企業が媒体の人材データベースを活用し、自社に合う候補者を見つけて直接スカウトする採用手法です。掲載型の採用と比べてコストはかかりますが、求人広告のように応募を待つのではなく、企業が能動的に「誰に」「どんなメッセージを送るか」をコントロールし、転職潜在層を含む最適な人材の獲得を目指し、マッチング精度と効率性を高めるのが特徴です。
市場に人材はいるが、他社との採用競争に負けてしまっている場合、最も効果的な採用手法になります。何故ならば、スカウトメールのタイトルから文面、条件提示内容や面接までのフローを精査することで、他社に差をつけ、欲しい人材を確保できる最適な採用手法だからです。しかし、それを認識している採用担当者が多くいるのにも関わらず、企業がダイレクトリクルーティングサービスを利用しない理由が2つあります。
- ①社内にダイレクトリクルーティングサービスの知見がない
ダイレクトリクルーティングサービスは初期コストやランニングコストがかかる媒体がほとんどです。それに差し当たり、多くの企業は今までサービスを利用したことがないため、「どのようにスカウトを行えば結果が出るのか」「投資金額に対して望んだ成果が得られるのかわからない」状態です。本コラムでは第三弾以降で、ダイレクトリクルーティングサービスにフォーカスをして、その利用方法のノウハウついてお話していきます。 - ②採用担当者の時間的リソースが足りない
社内にダイレクトリクルーティングサービスの知見があったとしても、採用担当者に時間的リソースが足りなければサービスを利用することは難しくなります。ダイレクトリクルーティングサービスのデメリットとしては、候補者一人一人に、その人に合ったスカウトメールを作成する必要があり、反響型の掲載型求人による採用と比べると多くの時間が必要になることです。そのような企業様にお役立ちできるのが、我々のようなRPO事業者です。採用活動の一部を外部の会社に委託することで、効率の良い採用活動の実現が可能となります。
4.人材紹介会社(エージェント)の利用
人材紹介会社を使った採用手法とは、人材紹介会社に自社の採用ニーズを伝え、登録している候補者の中から条件に合う人材を紹介してもらう「成果報酬型」の採用手法です。企業は具体的な要件を伝え、人材紹介会社が選考の一次対応を行うため、採用担当者の労力削減と質の高い人材獲得が期待でき、特にピンポイントで即戦力人材が欲しい場合や、公に求人を出しにくいポジションに適しています。ここまで聞くと非常に効果的な採用手法のように思えますが、大きなデメリットが2つあります。
- ①とにかくコストがかかる
人材紹介会社から採用を行った場合の成果報酬金額は一般的に想定年収の30~50%に定められています。仮に年収500万円の正社員を40%の成果報酬を定める人材紹介会社から採用した場合、500(万円)×40(%)=200万円の採用コストがかかる計算になります。この金額は採用コストの中ではかなり高額な部類であり、「本当に困ったとき」のみに利用するのが一般的です。 - ②適切な人材紹介会社との関係値作りに時間がかかる
世の中には多くの人材紹介会社が存在しており、どの会社が自社の求める人材を多く確保しているかを調査するのに多くの時間がかかります。また、優秀な人材を保持している人材紹介会社を見つけたとしても、すでに関係値の強い競合他社などと取引があった場合、紹介の優先度を下げられてしまうこともあります。「初期コストがかからないので複数の人材紹介会社と契約してみたが、一人も採用できなかった」というのはよく聞く話です。
人材紹介会社を利用する場合は、各人材紹介会社の事前調査をしっかりとしたうえ、有事の人材不足に備えて定期的に関係値作りをすることをお勧めします。
5.合同説明会や転職フェアに参加する
合同説明会・転職フェアへの参加は、多くの求職者と直接接触し、認知度向上・企業ブランディングを行いながら、効率的に母集団を形成する対面型採用手法です。企業側は自社の魅力をリアルに伝え、その場で面談や一次面接まで進めることも可能で、入社への動機付けがしやすいのが特徴です。説明会やフェアの規模にもよりますが、数十万~200万ほどのコストに対して、大量の採用を見込めることがメリットとなります。近年では書類やオンラインで一次的なスクリーニングを行う企業も増えている中で、対面で一次的アプローチをできる環境は他社との差別化に効果的です。
しかし、ブースへの呼び込みやその場で面接を行うなどの候補者へのアプローチを現場の採用担当者のスキルに依存する形となり、業務が属人化してしまうリスクがあります。
採用担当者の”営業的スキル”に自信のある会社には有効的な手段と言えるでしょう。
6.まとめ
上記にて様々な採用手法の整理とそのメリット・デメリットについて説明してきました。「人材は市場にいるのに採用がうまくいかない場合」はダイレクトリクルーティングサービスの利用が最適であるというのが私の結論ですが、あえて1本化するのではなく、リファラル採用のための社内制度を整えたり、緊急の際の人材紹介会社との関係値作りや合同説明会への参加を複合的に組み合わせることで、採用目標の達成の実現に近づくことができるでしょう。次にダイレクトリクルーティングサービスを利用する際の最適な媒体の選び方について解説していきます。
2.最適な媒体の選び方
本コラム第一弾でも述べたように、勝てる採用活動のフィールドがどこにあるのかを入念に調査することは、採用成功のための第一歩目になります。ここでは、ダイレクトリクルーティングサービスで採用を行う際に、勝てるフィールド=最適な媒体の選び方について説明していきます。
私は2年ほど前からとある建設会社から依頼を受け、採用代行を委託されているのですが、このクライアントの求める人材条件として、「土木施工管理技士の資格をもっていること」「関東で勤務可能」という2つが前提としてありました。市場の調査を行ったところ、ただでさえ建設業界は人手不足で人材の獲得競争が激しいうえ、ひとつ目の条件である「土木施工管理技士の資格をもっていること」を満たす候補者は希少であることがわかりました。この時点で採用手法としてはダイレクトリクルーティングサービスを選択することにし、媒体選定フェーズに移るのですが、最終的に以下の3社のサービスに候補を絞りました。
- ①A社→全登録者数約300万人。そのうち建設業界の占める割合は約15%。
- ②B社→全登録者数約300万人。そのうち建設業界に占める割合は約8%。
- ③C社→全登録者数非公開だが、毎月約2万人の登録者。建設業界に占める割合も非公開。
この時点でA社が最有力候補だと感じましたが、実際に有資格者がどれくらいの割合なのか、ひとりの有資格者に対して何社のアプローチがあるのかわからない状況です。そこで各サービスの営業担当者と関係値を作り、実際に採用対象となる候補者がどれくらいいるのか、採用競争率はどれくらいなのかを細かに調査しました。すると各社以下のような状況であることがわかりました。
- ①A社→採用対象となる候補者の数は約400名。一人の候補者に対して平均約30社がアプローチしている状況。スカウトの返信率は1~2%ほど。
- ②B社→採用対象となる候補者の数は約100名。一人の候補者に対して平均30社がアプローチしている状況。スカウト返信率は1~2%ほど。
- ③C社→採用対象となる候補者の数は約130名。一人の候補者に対して平均20社がアプローチしている状況。スカウト返信率は非公開。
上記からもわかるように、A社とB社は同等量のデータベースをもっていますが、建設業界の占める割合はA社の方が倍近くあり、採用対象となる候補者の数は約4倍であることがわかりました。また、C社は全体の登録者数は非公開でしたが、採用対象となる候補者はB社よりも多く、また、一人当たりの競争率も低いことがわかりました。
結果として、最もクライアントの求める候補者はA社に多いことがわかり、一人当たりの採用競争率を鑑みても、A社のサービスの利用が最も勝ち筋があることが判明したのです。
ダイレクトリクルーティングサービスの媒体を選定するうえで最も大切なことは、「本当に欲しい人材が何人登録しているのか」ということと、「その人材の採用競争率はどれくらいあるのか」を正確に把握することです。その数字を元に最も適した媒体の選定に成功すれば、採用成功の確率を最大化することができます。
第二弾まとめ
第二弾では数ある採用手法のメリット・デメリットと、「人材は市場にいるのに採用がうまくいかない場合」はダイレクトリクルーティングサービスの利用が最適であるという結論をお話しました。そのうえで最適な媒体を選択する方法を述べましたが、ここまででようやく最適な採用活動を行うスタートラインに立った状態です。
第三弾からは実際のダイレクトリクルーティングにおける具体的なノウハウについて説明していきます。
【第三弾:ダイレクトスカウトで差をつけろ!開封率と返信率をあげる方法】へ続く
