先日2020年5月20日(水)に行われましたオンラインセミナー「アフターコロナのキャリア・複業・起業」の体験レポートです。
登壇者自己紹介
松本)起業するのが夢で、起業後、事業の売却なども行い、現在は人材関連のコンサルテイングや個人の方へ向けてもキャリア相談なども受けておりメンターとしても活動しています。
愛宕)「働くをもっと自由に」を掲げるコデアル株式会社代表。
起業時は”ヒモ”です!(笑)その結果たまたまリモートワークをすることになりました。
黒田)リクルートの中途採用「とらばーゆ」等の紙媒体から、リクナビネクストなどWebメディア編集に27年携わる。
現在は、人材紹介サービスを立ち上げています。
過去の不況期には、キャリア形成や転職についてどのようなことが起こったか
黒田)景気の好調と不況は一定のサイクルで10年に1回起こっています。
直近では、東日本大震災でした。
2009年のリーマンショックではインパクトが大きく、期間は2年ちかくと長く、落ち込みのダメージがありましたね。
2001年にITバブルがはじけ、1997年山一證券倒産の金融ビックバン、1991年バブル崩壊と周期的に不況は起こっています。
今回の新型コロナウィルスにおいては、2019年後半頃からの景気は下がり始めていて、オリンピック後の景気は周知のことであった不況が加速されました。
後にはコロナ不況と言われるでしょう。
不況期の中、転職市場は減速していくと思われますが、リーマンショックの頃には、人材業界で言うと前年比マイナス60%が半年以上続いていました。
これから本格的な不況は1〜2年かけて続いていくでしょう。
また、その度合いはリーマンショックの時よりも厳しくなると予想されるので、求人件数は去年の半分になると予想しています。
リストラのプロを募集するなどの不況期ならではの求人が出てきそうですね。
不況期に強い職種は?
黒田)代表的なのは医療系、IT系ですね。
医者、薬剤師は安定しているのでエムスリーさん等が展開されていますが、求人領域では職種の総合型がメインでボラティリティが激しいですね。
パナソニック、ソニーなどの製造業から、IT Web業界へアナログからテックに変わってきて、スキルを持っている人が少ないので奪い合いになっていく構図です。
逆に、対人職で、営業職、事務職、アナログで対応していたところが厳しくなってくるかと。
ある大手銀行でも、店舗の4割が閉店。リアル店舗など厳しいですね。
ファシリテーター:松本 淳さん(一般社団法人アースメディア代表理事)
コロナショックのキャリア市場への影響は?
愛宕)コデアルのサービスでは、オンライン・インターネット上で体験が置き換わる職種、テック系・IT人材に動きがあります。
旅行予約、飲食店に関連する企業の求人数は減っていますが、テック系の求人は特に増えています。
コロナ前は、複業が多くが膨れ上がっていましたが、コロナ後は、複業は少なくなって、新たに「設計」など考えたり難易度の高い職種に求人ニーズが増えています。
エンジニア職に関してはほぼ安定して出ている印象です。
黒田)変化はこれからだと思いますが、企業は警戒モードに入るため、不要不急の求人はなくっていき、新卒採用は10年かけて育てていくものなので、今後の新卒の受け入れ方も心配ですね。
企業は守りの採用を取ると共に、大きな長期波動で変化しようとしている段階。
シンボリックなのはトヨタにおいて、終身雇用はできないと発表されたこと。
「人生100年社会」となった今、国としては70歳まで企業に雇用してほしいところ経団連は45歳から早期退職も進めている。
黒字リストラがあって、新しいスキルを取り入れていく必要があり、DX(デジタルトランスフォーメーション)についてこれない人は溢れ、優秀なエンジニアなどを採用していくようになるでしょう。
それがコロナにおいてスピードアップすることになる。
コロナがあったことで進んだものの最たるものがリモートワークで、ある程度戻るとは思いますが、オフィスが必要なくなるなど戻らなくてもいい職域も増えてくる。
愛宕)個人の心構えはとしては、コデアルという社名は、個人の個からきているとおり、個の尊重をしているのですが、働く人の目線に寄り添った時にDXや、SQL書けたり、eラーニングなどにビジネス的なスキルがあるといいとは感じます。
明日からでも始められるのは、マインドセットで、PDCAではなくOODAモデルが大事になるかと。
観察〜仮説構築〜意思決定〜実行の流れですが、例えばコロナの影響も予想できなかったように、あえて現状をあるがままに見ていくことから始めたらいい。
松本)長いキャリアプランが読みづらいから数年という短い単位で、というお話をさせていただいたことがあるのですが今、この瞬間を見て、何が起こってもいいように、という心構えですね。
愛宕)DX化されることで、高速で学習が定量的にできるので、あるがままを見てトライアンドエラーを高速に回すことが必要になると感じます。
黒田)短期の衝撃的な不況と長期周波の変化が同時に起こっていますが、これからは付加価値が高く、レバレッジが利く、生産性が高い人を採用したいとシフトしていくでしょう。過去の有名な話ですが、平成元年の時価総額ランキング50社のうち、32社が日本の会社だった。30年経つとトヨタ一社がランクインしていることからGAFAの時代・動きにようやく気づき始めた印象を受けています。
そんな中で、個人としては、インディペンデント・コントラクター、個人事業主的な思想で自分の人月単価をどこまで高められるか、自分が生産できるものの生産性をどこまで極限に上げられるかというのをあらゆる職域へ挑むことが最大の防御になるのではないかと。
会社に守られる、雇われるのではなく、自分を高く買ってくれるところに売りに行くスタンスを持つことが大事です。
愛宕)時価総額のランキングが変わっていくことは労働市場において必要とされる人材価値にも連動している感覚があって、GAFAが上がってきたことでエンジニア・テック系の企業の求人が増えています。
過去にはiPhoneのアプリ開発のエンジニア求人が多かったとことから、最近では機械学習、データ分析の価値が上がっています。
価値の入れ替わりですね。自分の時間をどう企業に提供していくのか?あまり先を読みすぎないのも必要だと感じます。
松本)欠員募集的な求人もあったかと思うのですが、人数合わせじゃなくて利益を持ってこれる人、利益に貢献出来る人の受け入れが増えそうですね。
黒田)「個人ごとの時価総額」になるというイメージがあります。
30年ちょっと人材業界でやってきましたが、30年前と30年後は時の流れ方が違う。
どんな風に変わっているか想像ができないですね。
変化の度合いが激しいのでふるい落とされないためにいかに学習していく力をつけておくのかが大事ですよね。
愛宕)モノを持ちすぎないことや、家を持たないこと、生活の負担を減らしていくことで、5〜10年先の労働市場で価値になるためになる経験を得る。
そんな将来の種を蒔くための複業、将来の自分への投資という意味での複業が良いと感じています。
松本)キャリアに投資って言いますけど経験を買いにく複業ってことですよね。
キャリア以外にも、起業にも通じると感じますね。
リモートワークにおいて大事なことは?必要なスキルは?
愛宕)文章を書く機会が多くなっているので、誤解なく意図を伝える言語化できる能力が必要だと思います。
二つの意味があって、ひとつは口頭で話さなくても良いこと。
二つ目は役割を譲るための言語化、例えば、チャット上の記載内容がそのままマニュアル化につながります。
明文化することで、後から入った人の成長にもつながりますから言語化・明文化する能力はリモートワークで高い能力になります。
松本)チャットで書いたことが、そのままマニュアルの草案になるって非常にいい流れですね。
黒田)リモートワークに関しては、あんまりリアリティがないのですが、足繁く対面で通ったり、なにかあれば電話するといったビジネスマンは無くなってきていますね。
仕事上で言語化する力、テキストでエビデンスを残していくことが大前提になりますし。
配送業、プラントメンテナンスなど経験が活きる仕事は継続的にありそうですが、ガテン職はリモートができないので、職人などは価値があがりそうですね。中途半端なホワイトカラーは生きづらくなりそうです。
コロナ後の複業について、どんな風に考える?
愛宕)ポジティブな複業と逃げの複業の二種類があると思っています。
前者はチャレンジな複業。現状の職域の中だけで複業をするのは後者。
1円でも高い複業ではなく、短期投資する複業はコロナ後は厳しくなってくると感じてます。
本業で大事な役割・ポジションを取るためにあえて本業を頑張り、そこで得られない新たな経験を複業的に自己投資してみると意味があるのではないかと。
松本)キャリアの掛け合わせ、可能性を広げる複業はいいですね。
複業から起業する人はいますか?
愛宕)クライアントワークで受ける数が多くなって起業したケースが多い気がします。
逆にチャレンジングなアイデアを生かすとしたら複業でやってみて、タイミングが来たら起業して形にするというのは戦略的にいいのかなとは思います。
黒田 真行さん(ルーセントドアーズ代表取締役)
コロナの時代に、人材業界の観点でアドバイスは?
黒田)4月以降は採用ストップで、人事の中にも採用・労務などある中で採用だけの人事はしばらく出番がなくなると感じています。
人事のスペシャリスト、制度設計、採用、それぞれスペシャリストがいると思いますが経営戦略と人事戦略がリンクしてないケースが多く、コロナ後、構造が変わると思います。経営企画側からのオーダーを待たず人事が経営に踏み込んで行かないと人事の存在価値が発揮できないように感じています。どこを雇用し、雇用以外の業務委託に変えていく、代理店に変えていくなど人事が描いて進める。経営に人事が踏み込んでいくためには、人事経営視点の経験・能力の上流化が必要になると考えています。
松本)本来は経営戦略・人事戦略が密接になっているものが結構乖離している企業が多いですよね。優秀な人事の方は、経営陣を動かせる人ですね。コロナ以後、特にそうなると感じます。
愛宕)黒田さんのご意見に共感です。経営戦略と人事が密接につながるイメージがあります。
受け入れ後の振り返りに相対的な価値があると思っていて、求人募集~面談〜受け入れのループが回っていて採用して終わりではない。振り返りという適切な判断があって受け入れ後の精度が上がるから求人募集~面談〜受け入れの流れに成果が上がると考えています。
松本)リモートワークが普及するとケアも必要ですね。ケアをしてサポートする会社が選ばれそうですし、マネージャーの価値も高まりそうです。
人材事業者がコロナ後、生き残っていく術とは?
黒田)人材業界もリーマンショック以降に入られている方が多いと思うのですが、人材業界は30年くらいの業界なので、まだ成熟していない、まだ途中の業界である感覚です。
100年後の雇用は、このままでいいのか?という視点を持つことで、ビジネスチャンスがある。
スカウトの返信率などのレベルではないですね。
新卒採用の方法しかり、人口が減る中、日本の適材適所を作っていくには、いろんなやり方でチャレンジしてく必要がありそうです。
何のためにこの仕事やっているのかという歩幅の大きいチャレンジができるといいですよね。
愛宕)燃費が悪い採用からの脱却になるのではないかと。
コデアルは「働くをもっと自由に」をビジョンとしていますが、渋沢栄一さんの論語と算盤のように、金銭的報酬と心理的報酬をあわせた、意義ある経営が大事だと感じています。
愛宕 翔太(コデアル株式会社 CEO)
20時で一度中締めの後、質疑応答の時間へ
今、この状況でも転職活動する?
愛宕)欲しい物があるなら、バーゲンでなくても買うようなタイプなので、今が「やりたい」と感じるならやると転職活動するのも良くて、コロナだから不安という理由でしないのは違う気がしますね。
黒田)40代以上の方の話を聞いていますが、いまは「辞めるのは辞めてください」と言っています。
席は置きながら活動して、転職せざるを得ない場合にを考えて、大きくリスクを取り過ぎないほうがいいのではと。
給料をもらうか、報酬を自分から取りに行くかという分かれ目が大きく、後者は前のめりな戦い方なのでいいですが、もっと貰える場所はないか?という人は羽交い締めして止めてます。笑
松本)カルチャーマッチしないなどネガティブな理由では待つときかなと思うのですが、「やりたい」という前向きな理由であれば長期的な視点では中断する必要はないと考えるのですね。
転職は投資と同じで、自分のタイミング次第ですね。
黒田)体壊してまで働く必要はないし、非常事態ならやめるほうがいい。
転職も複業も、自分が機嫌よく働いていける状況を作るのが一番の目的なので、できれば得意なことで人から必要とされるものを見つけるといいですよね。
提供価値と報酬を引き換えにできる生き方ができるのであれば複業でも転職でも、もっと言うなら社内で役割を変えてもらう社内異動という方法もある。
労務とお金を交換しているだけの内職的複業と、付加価値を交換している複業とはニュアンスが違いますよね。
愛宕)後者は創造的複業と呼びたいですよね。
黒田)時間はあっという間に進んでしまうので、自分が気持ちよく働けることを最大目標としておいてもらいたいです。
アフターコロナ後、どんな企業を選ぶといいか?これからの時代にいい会社とは
黒田)靴屋にいい靴ないですかって聞かないですよね。人それぞれで「いい会社」が違う。パートナー選びと一緒。
人生にとって大事なことなので人に任せず、この仕事をやった時に、こういう仲間と、こういう仕事をして、定年までやって仕事をやってよかったと思えるかどうかという観点で考えたほうがいいのではと。
案外、みんな、お金とか時間に目がいっている気がするので、充実感を大事にしてほしいですね。
愛宕)企業を選ぶ時、主体的な意思決定なのかどうか。
起業でも複業でも転職でも、助言はもらってもいいけど、最終的な意思決定は自分がする。
上司が言ったからやったというのは他責で、市場価値をあげられるような成長はないと思うので、いまだからこそ、主体的に意思決定をして自分で決めることが大事だと感じてます。
黒田)就職の時の先生が、親が、キャリアアドバイザーが・・など他人に言われるのではなく、人生の主導権を人に渡しすぎは注意ですね。人生は自分で運転して欲しい。
愛宕)僕も、主体的な元ヒモでよかったと思います。笑
ご参加いただいた皆様ありがとうございました!
ファシリテーター
松本 淳
一般社団法人アースメディア代表理事
株式会社ブライトアンドカンパニー代表取締役
1997年株式会社インテリジェンス(現パーソルキャリア)に入社、人材紹介事業の新規立ち上げで事業戦略立案などを担当。 2003年に独立、求人検索エンジン事業のジョブダイレクトを創業し、リクルートによるM&A提案を受け5年で事業売却。その後は海外NGO支援、社会起業家支援などを手掛ける一方、新規事業戦略、組織・人材戦略を中心に法人への事業コンサルティングを提供。また「企業とコミュニティ」の関係性に着目し、SNSを基盤とするソーシャルな関係構築と企業と個人の共創の場づくりを実践。
Twitter:@Jn_Matsumoto
note:https://note.com/jn_matsumoto
語る会メンバー
黒田 真行
ルーセントドアーズ代表取締役
1988年リクルート入社。2006~13年まで転職サイト「リクナビNEXT」編集長。
2014年、 日本初の35歳以上専門の転職支援サービス「Career Release40」をリリース。
2019年、中高年向けキャリア相談サービス「CanWill」 をサービス開始。
Twitter:@damadama777
愛宕 翔太
コデアル株式会社 CEO
働くをもっと自由に。
即戦力エンジニア採用のプラットフォーム「CODEAL( http://codeal.work )」運営。
Twitter( @shotaatago )、ブログ( https://note.mu/shotar )では、エンジニアの採用やリモートワークを支援するためのノウハウや日々の思いを発信中。