ラフノート株式会社CEO西小倉様に、コデアル株式会社CEOの愛宕よりインタビューさせていただきました。
大学卒業後、たったひとりでの創業
愛宕 最初に、御社でやられている事業について教えてください。
西小倉 TimeCrowdという時間共有ツールの開発をやっています。あとは受託開発ですね。TimeCrowdですが、例えば従来のようなオフィスに集まって仕事をするケースでは、勤怠管理はタイムカードで良かったと思います。ですが、いわゆるクラウドソーシングなどでのリモートワークの場合、自宅で2時間作業し、ちょっと手を止めてまた作業を開始する、というように、隙間時間を生かした働き方がありえます。そうしたケースに対応したツールがTimeCrowdになります。
愛宕 受託開発をやりながら、Time Crowdリリースに至るまでの経緯はどのようなものだったのですか?
西小倉 2007年に大学卒業後、ひとりで起業しました。元々自社サービスをやりたくて起業したのですが、最初はビジネスモデルも何もわからない、ともかく人生経験積みながら、いつかは自社サービスを出すんだ、って思いながらやりくりしていて、気がついたら10年経っていました。会社を作ったときは、僕はコードも書けなかったんですよ。だから制作の案件を150万で受けて、140万で外注したりしていたんです(笑)。
愛宕 かなりハードですね(笑)。
西小倉 はい、大変でした。創業当時にはともかくそういう風にやりながら、2人、3人と人数が増えていき、ちょっとして十条にみんなのオフィス兼自宅を借りました。オフィスと全員の自宅家賃全部合わせて9万円っていう(笑)
受託開発での炎上
愛宕 ずいぶん大変だったのですね。最初は受託だけやっていたんですか?
西小倉 はい。最初の方は何も分からなかったですから。受託も「いくらでできるの?」って言われて、何も経験がないと分からない。そうすると「じゃあ30万でやってよ」って言われてしまう(笑)。わりに合わないわけですよね。仕方ないから寝ずにやる。炎上しちゃうわけです。でも、僕は受託開発も面白いと思うんですよね。お金を払ってでもやってもらいたい、という明確なニーズがそこにあるわけだから。やれば喜んでもらえる。だから好きなんです。ただ、元々やりたかったのは自社サービスだったので、そのために受託で仲間が疲弊してたら本末転倒だなっていう思いもありました。そんな時にクラウドソーシングのサービスが出てきたんです。あれは2012年だったかな。少人数で全部やろうとすると間に合わない。かといって人をこれ以上雇う余裕もない。そういう時に2週間だけスポットで作業をしてもらえる。これは便利だなと積極的に使いはじめたんです。
クラウドソーシングの利用
愛宕 クラウドソーシングを使ってみて、社内でやるものと、クラウドソーシングで出すものとの線引きはどのようにしていますか。
西小倉 本番環境での作業など、セキュリティの絡む作業はまず無理ですよね。クラウドソーシングに向いてるもので真っ先に浮かぶのはテストかな。実装ができていて、それに対するテストコードを追加するように依頼するのは指示も楽です。実装も可能な範囲では任せますが、無理そうなものに関してはこちらでやる、みたいな線引きです。また、お客様とやりとりをし、モックを作ってみてGOが出たところでクラウドソーシングに投げるとか。少なくともその辺りまでは自分達ががやったほうが早いですね。
愛宕 お客様との折衝は自分たちでやっていたんですね。クラウドソーシングの利用で順調に行くようになったのでしょうか?
西小倉 最初の方はやはり色々と大変でしたね。仕事を発注する側ではなく、仕事を受ける側として参加したんです。最初は固定給のものを受けていたのですが、これを時給のものに切り替えることで売り上げが上がったんです。固定給のものって、この機能、このツールを作ったらいくら、ってなっているのですが、大体わりに合わないものが多かったんですよね。
時給か固定給か
愛宕 そうすると、仕事を受ける側としては時給の方が良いのでしょうか?
西小倉 例えばお客様と対面でやる受託は固定報酬で良いと思うんですよ。信頼関係がある中でやるから。今回は無理させたな、って思ったら次は良い案件を取ってきてバランスを取ろうみたいなことがあるので。
一方、クラウドソーシングでは良い意味でドライな関係性でやっていますよね。だから、固定報酬でキツくなったら続かないんじゃないかなって思います。それで、仕事を受ける側としてそう思ったので、発注する側に回った時も仕事は時給で出すようにしてるんです。……まぁでも難しいですね。技術を生かしてとても良い機能を短時間で作った場合なんかはその分のお金しかもらえなくて辛い、といったケースもありえますし。その逆に、時間はとても掛かっているのに相応のアウトプットが出てこないケースで、時給だけで対価をもらうっておかしくはない、みたいな話にあったり。
時間単位でのリモートワークに最適なTimeCrowd
西小倉 クラウドソーシングに仕事を受ける側から入っていって、そのうち仕事を依頼する側にもなって、という風にクラウドソーシングに関わっていく中で、クラウドソーシングには従来よりもっと柔軟な時間の管理ツールが必要だと思ったんです。
例えばですけど、oDesk(現在はUpworkというサービス名)みたいなサービスで、一定時間おきに画面キャプチャでちゃんと仕事しているかな、みたいな監視ってすごく不毛じゃないですか。それで、そういうので海外に仕事を依頼したりして、画面を確認するとたまにTwitterを見てたりする(笑)。
海外ではそれでいいかもしれないけど、そういう諸々を日本にそのまま持ってきても問題があると思っていて、今、何をしているのかがもうちょっとシンプルに分かるようになればいいと思ったんです。だから、最初は自分たちのために作ったんですよ。自分たちが仕事を依頼した相手がいつ、どういう作業をどれだけの時間でやっているのか、GitHubを使っていたから、issueと紐付けてグラフ化して見れたらいいと思って。そういうきっかけで作ったんですよね。
[実際のTimeCrowdの画面]
そこから、たとえばですけど弁護士事務所なんかではタイムチャージといって時給でいくらみたいな形態で料金を取ったりするので、そんな使われ方もされるようになりました。今のところはまだそこまで大きな市場規模ではないかもしれませんが、2020年に東京オリンピックがあって、世界中から外国人が来るけど今でさえ乗車率は200%で捌ききれない、だから労働人口6000万人のうち10%を完全在宅勤務にしますという風に総務省が言っていて、これからリモートワークの増加に伴って必要とされるサービスだという風に思っています。
会うことが最高だからこそのリモートワーク
愛宕 そうですね。確かにこれからのリモートワークの市場はもっと伸びてくると思います。最後にコデアルの記事の読者に対して何かあればお願いします。
西小倉 むかし「会うことが最高だからこそのリモートワーク」 というエントリを書いたことがあって、そこでも少し触れているのですが、リモートワークというと独りで部屋に閉じこもり黙々と作業をする、そういう引き篭もりのようなネガティブなイメージを持たれる方がまだまだいると思うんですよね。
でも、オフィスを持たないからこそ、フットワーク軽く、必要に応じて人に逢いに行くこともできるし、リモートワークできる体制が整っていれば、どこか遠くに移動している間も仕事を進めることができる。直接会って仕事をすることを軽視しているわけではなくて、その重要性を認識した上で、よりメリットの多い働き方がリモートワークならできると思っているんです。
愛宕 そうですね。どこにいても仕事ができる、ということはエンジニア以外にも言えると思っています。例えば経営者でも、ある国でどういうサービスが流行っているのか、固定されたオフィスでしか仕事ができないのではそういった情報に触れるのも遅れると思います。本日はありがとうございました!